美容皮膚科の分野では、AI(人工知能)の導入が急速に進んでおり、従来の手法では成し得なかった革新的な診断や治療が実現されつつある。AI技術の活用により、一人ひとりに合わせた個別化された治療計画が立てられるようになっている。さらに、診断の精度向上や治療結果の予測も可能となっている。
米国の研究グループが8月27日に複数の具体的な技術を含めて論文報告した。
AIを利用してフィラー注入部位を特定
AI技術が美容皮膚科でどのように活用されているのだろうか。今回の報告によると、次のような技術が挙げられている。
技術の名称 | 用途 | 概要 |
---|---|---|
Canfield’s VISIA AIスキンシステム | 皮膚の表面および皮下の色素異常や血管異常を測定 | 皮膚の状態を精密に測定。治療計画の立案を支援 |
DenseNet201とU-netアルゴリズム | 皮膚の水分含有量の高精度な分類と評価 | 画像データとアルゴリズムを用いて、皮膚の水分レベルを評価 |
YOLO-v2 オブジェクト検出システム | 肌状態に基づいて最適なスキンケア製品を推奨 | 肌の画像を解析し、最適なスキンケア製品を提案する |
Excimerレーザー | 白斑や色素異常、ニキビ跡の治療回数の予測 | 白斑などの治療に必要な治療回数を予測し、治療計画を最適化 |
Alluringクラウドベースシステム | 皮膚と頭皮の解析と、個別化されたスキンケア製品の推奨。 | 皮膚や頭皮の画像を包括的に解析し、水分、油分、毛穴のサイズなどの要因を評価。 |
Follicular Unit Extraction(FUE)術後評価 | 毛髪移植手術後の毛髪の健康状態を評価し、手術戦略を策定。 | アルゴリズムを使用して、毛髪の太さを推定し、術後の毛髪移植の成功率を評価。 |
3Dフェイシャルスキャン | シミュレーションによる治療後の顔画像の生成とフィラー注入部位の特定。 | 若返りプロセス後の正確な3D顔画像を生成し、治療計画に活用する。 |
まず、CanfieldのVISIA AIスキンシステムは、皮膚の表面および皮下の色素異常や血管異常を高精度に測定することで、治療計画の立案を支援する。このシステムは、従来の手法では見つけにくかった異常も見逃さずに検出できる。
さらに、YOLO-v2オブジェクト検出システムは、肌の状態を迅速かつ正確に分析し、それに基づいて最適なスキンケア製品を推奨する。AI技術の導入により、経験や勘に頼る必要がなくなる。
AI技術の導入により、施術を受ける人たちの体験も大きく変わりつつある。例えば、Alluringクラウドベースシステムは、肌や頭皮の画像を解析し、その結果に基づいて個別に適したスキンケア製品を推奨。さらに、3Dフェイシャルスキャン技術は、シミュレーションを通じて治療後の顔の変化を視覚化することができる。これにより、施術を受ける人は治療前に結果を確認し、安心して治療に臨むことができるようになっている。
AIを活用した美容医療が続々登場
ヒフコNEWSではこのほかにもAIを活用した美容医療の最新技術を紹介してきた。今回の論文で紹介された技術と比べても、同じような方向にテクノロジーが進化していると考えられる。今後これらの普及によって美容医療は着実に進化すると予想される。
技術の名称 | 用途 | 概要 |
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ARTASシステム | 毛髪再生における毛包の採取と移植の最適化 | AIとロボティクス技術を組み合わせ、毛包の位置、角度、方向、密度を解析 |
ModiFace & Revieve AI | フィラー治療の事前シミュレーションと注入部位の最適化 | AI技術を用いて、フィラー注入前に3Dスキャン画像を分析 |
AI搭載眼鏡 | 手術中の次のステップの提案 | AIを利用して手術中にリアルタイムで次の手順を提案する眼鏡型デバイス |
VECTRAシステム | 美容手術前後の視覚的シミュレーション | 手術前後の変化を3Dで視覚化する画像ツール。豊胸手術などで活用 |
Crisalix | 手術前後の姿をシミュレーション | 美容手術の前後で自分の外見がどのように変わるかをシミュレーション |
AIの活用は、美容皮膚科における幅広い分野に広がるのは間違いなさそうだ。こうしたテクノロジーをいかにより良い効果につなげ、安全性の向上につないでいくか、医療機関の力量が試されることになる。