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美容医療の後に起きた皮膚壊死の原因は?裁判で争われた低温熱傷 連載【細川亙 現代美容医療を殿が斬る】Vol.13

 「細川亙 現代美容医療を殿が斬る」では、日本形成外科学会理事長をはじめ、多くの要職を歴任し、米国形成外科学会名誉会員でもある細川亙氏が、現代美容医療が抱える様々な問題に鋭い視点で問題提起する。「殿」というのは、細川氏が細川ガラシャの子孫であるから。その源流は明智光秀に通じる。そんな歴史的背景を持つ細川氏が現代に舞台を移して美容医療の分野で一刀を振るう。激動の美容医療の世界をどう治めるのか。

第13回テーマ「美容医療裁判の始まりについて」

 美容クリニックでの施術後に太ももの脂肪吸引によるダメージで傷跡が残ったA子さんが、細川氏の元を訪れてきた。自らの受けた被害が納得できず、クリニックを訴える事態になっているという。最初の訪問でA子さんが説明したことは何だったか。また、美容施術で受けた後遺症の内容と、その原因、裁判を決めた理由とは?

美容医療裁判の始まり

 (第12回から続く)東京や札幌の医師からの示唆を受けてA子さんは私を訪ねてきた。

 A子さんの右大腿部に見られた手掌大の瘢痕は皮膚の全層壊死後に生じたものであると私は診断した。皮膚壊死に対する治療として植皮術や皮弁術などの外科手術が用いられた形跡はなかった。

 A子さんによると、同部は保存的治療による上皮化が図られ、完全に上皮化するまでに1年以上を要したとのことであった。この皮膚壊死の原因については、A子さんがこれまで受診してきた何軒かのクリニックでの診断と同様に、私も右大腿部からの脂肪吸引が原因であると診断した。

 しかしながら、施術を担当したBクリニックは、A子さんが帰宅後に当たっていたストーブで生じた低温熱傷が原因だと主張しているとのことであった。A子さんは私に診断書や意見書の作成、さらに場合によっては証人としての裁判所への出廷を懇願した。

「放射熱による低温熱傷」を信じられない

 さて法人Bの理事長B’氏はJSAS(2つの日本美容外科学会のうちの一つ。もう一つはJSAPS)に属する美容外科学界の大物である。B’氏は、私があまり学問的とは評価していないJSASという団体に属しながらも、形成外科の著名な学術誌PRSに論文を掲載されたこともある知性派美容外科医と見なされていると思う。

 そのB’氏が「放射熱による低温熱傷」というような現象を脂肪吸引部位の皮膚壊死の原因だと主張していることに私は驚いた。B’氏が本当にそのように信じているのならば、そのような極めてまれな症例をぜひ学会誌などに症例発表してほしいものである。医療関係者のみならず、社会一般にも大きな警鐘となる症例報告になるだろう。

 自宅や雪国の駅舎などで、服を着てストーブに当たっていると、「熱い、やけどした」という自覚もなくいつの間にか重度な熱傷を負ってしまうことがあるという世にも稀な現象なのだから。

 私がさらに驚くのは、このようなB’の主張を支持して被告側証人を引き受け「放射熱による低温熱傷はよくあること」と証言する医師(C)がいることである。CはかつてB’に雇われていたことがある美容外科医だった。私はそれを忖度の上の行動だと考え、美容医療界の闇を見る思いを持った。(続く)

プロフィール

細川亙 現代美容医療を殿が斬る

細川亙 現代美容医療を殿が斬る

細川亙(大阪大学名誉教授)

米国形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会特別会員、日本頭蓋顎顔面外科学会名誉会員、日本創傷外科学会名誉会員、JCHO大阪みなと中央病院名誉院長。日本形成外科学会理事長、日本形成外科手術手技学会理事長などを歴任。大阪大学形成外科初代教授。1979年、大阪大学医学部卒業。

(編集:星良孝)

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Author

米国形成外科学会名誉会員、日本美容外科学会特別会員、日本頭蓋顎顔面外科学会名誉会員、日本創傷外科学会名誉会員、JCHO大阪みなと中央病院名誉院長。日本形成外科学会理事長、日本形成外科手術手技学会理事長などを歴任。大阪大学形成外科初代教授。1979年、大阪大学医学部卒業。

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