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アートメイク色素79種類を確認、10種類で皮膚アレルギーの報告 不純物や長期安全性も課題に、米国とドイツの研究【アートメイクの研究を見ていく】

カレンダー2026.7.14 フォルダー連載・コラム
専用機器で唇に色素を入れるアートメイク施術のクローズアップ。

唇のアートメイクでは、使用する色素の成分や不純物、施術時の衛生管理が安全性に関わる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

 アートメイクに関する研究を引き続き見ていく。今回は、施術に使われるインクの成分と、その安全性に関する二つの研究を取り上げる。

 眉やアイライン、唇などに色素を注入するアートメイクでは、どのような色素が使われ、どのようなリスクが指摘されているのか。

 米国の2024年の研究では、市販されているアートメイク用インクの表示成分とアレルギー性接触皮膚炎の報告を調査した。

 一方、ドイツの2020年のレビューは、色素だけでなく、不純物や分解物、無菌性、成分表示などを含む包括的な規制の必要性を指摘した。EUではその後、REACH規則に基づくタトゥー・アートメイク用インク中の有害化学物質の使用制限が、2022年1月から適用された。

米国市場の974製品を調査

赤、ピンク、茶色などのアートメイク用インク容器を手に持つ様子。

アートメイク用インクには複数の色素や添加成分が含まれることがあり、成分表示や不純物の管理が課題となる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

  • 974製品を調査→ 米国市場で販売されるアートメイク用インク974製品のSDS(安全データシート)を分析した。
  • 25ブランドが対象→ 73ブランドのうち、SDSを確認できた25ブランドの製品を集計した。
  • 市場調査として実施→ 実際の化学分析ではなく、メーカーが開示した成分情報を基に使用色素を整理した。

 2024年、米国のロザリンド・フランクリン大学とノースウェスタン大学の研究グループは、米国内で販売されるアートメイク用インクの表示成分を調べ、使用されている色素とアレルギー性接触皮膚炎との関連を検討した。

 論文によると、アートメイクは、針を使って色素を皮膚内に注入する施術。一般的な装飾目的のタトゥーよりも浅い層に施術され、時間の経過とともに薄くなるよう設計されることが多い。主な施術部位として、眉、まぶた、唇、乳輪、傷痕などが挙げられる。

 研究グループは2023年7月、インターネット検索を通じて、米国でアートメイク用インクを販売するウェブサイトを調査した。対象としたのは、米国内で製造されているか、米国の卸売業者を通じて販売され、必要な安全データシート「SDS(Safety Data Sheet)」を確認できる製品だった。

 検索では73ブランドを確認したが、完全なSDSを入手でき、研究条件を満たしたのは25ブランド。研究グループは、これらのブランドが扱う974製品について、SDSに記載された色素を集計した。

 なお、この研究は、インクを化学分析して実際の成分や含有量を測定したものではない。メーカーなどがSDSで開示した情報を基に、米国市場で使用されている色素の傾向を調べた市場調査となる。

79種類のうち、10種類でアレルギー報告

横たわる女性の眉に、施術者がアートメイクを行っている様子。

アートメイクは美容目的で広がる一方、色素の安全性や施術者教育、衛生管理を含む規制の必要性が議論されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

  • 79種類の色素を確認→ 974製品から79種類の色素を確認し、1製品当たり平均4種類が使用されていた。
  • 10種類で報告→ 79種類のうち10種類で、アレルギー性接触皮膚炎との関連が医学文献で報告されていた。
  • パッチテストは限界も→ 一般的なパッチテストが陰性でも、インクによるアレルギーを否定できない可能性がある。

 調査の結果、974製品から79種類の色素を確認した。1製品に使われている色素は平均4種類だった。

 79種類のうち59種類は有機色素で、「アゾ色素」「キナクリドン色素」「アントラキノン色素」などが中心だった。残る20種類は「炭素系色素」のほか、「鉄」「クロム」「マンガン」「モリブデン」などの無機系色素が含まれていた。

 研究グループは続いて、確認した79種類の色素について医学文献を検索し、アレルギー性接触皮膚炎の報告があるかを調べた。その結果、有機色素と無機系色素の双方を含む10種類で、アレルギー性接触皮膚炎との関連が報告されていた。

 アレルギー性接触皮膚炎は、特定の物質に免疫が反応し、赤み、腫れ、かゆみなどが現れる皮膚炎を指す。

 ただし、今回の研究は施術を受けた人を追跡したものではない。このため、アレルギーがどの程度の頻度で起きるのか、どの色素の危険性が高いのかまでは分からない。

 診断にも難しさがある。色素に対するアレルギーが疑われても、一般的なパッチテストでは陰性となる場合があるという。パッチテストは、原因として疑われる物質を少量含んだ試料を皮膚に貼付し、一定時間後の皮膚反応を確認する検査だ。皮膚表面に試薬を貼るパッチテストと、皮膚内に色素を注入するアートメイクでは、色素が皮膚に接触する方法が異なるためだ。

 研究グループは、パッチテストが陰性でも、インクによるアレルギー反応を完全には否定できないと指摘している。

ドイツ、不純物や分解物まで含めて安全性を検討

まぶたの際に専用機器でアイラインのアートメイクを行う様子。

アイラインのアートメイクでは、目元に近い部位へ色素を入れるため、インクの安全性と施術時の衛生管理が重要になる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

  • 色素だけではない→ インクには顔料のほか、保存性や粘度を調整する補助成分も含まれる。
  • 産業用顔料も使用→ 一部の顔料は工業用途向けで、皮膚内への長期注入を前提に評価されていない場合がある。
  • 包括的な評価が必要→ 色素だけでなく、不純物や分解物も含めて安全性を検討すべきと指摘した。

 2020年、ドイツ連邦リスク評価研究所の研究グループは、タトゥーとアートメイクの安全性を規制の観点から検討したレビューを発表した。

 このレビューは、個別の製品を新たに分析したものではない。タトゥーやアートメイクに関する市場調査、臨床報告、毒性学的な研究などを整理し、色素、不純物、添加物、分解物をどのように管理すべきかを検討した。

 研究グループが注目したのは、タトゥーやアートメイクに使われるインクが、色素だけでできているわけではない点だ。インクには、色を作る顔料のほか、粘度を調整したり、成分の沈殿を防いだり、保存性を高めたりするための補助成分も含まれる。

 さらに、顔料の多くは、もともと自動車、建築資材、化粧品などの産業用途に向けて製造されたものだという。そのため、人の皮膚内に注入し、長期間とどまることを前提に安全性が評価されているとは限らない。

 皮膚の表面に塗る化粧品と、皮膚内に注入するアートメイク用インクでは、体との接触の仕方も大きく異なる。研究グループは、インクの安全性を考える際には、色素そのものだけでなく、補助成分や不純物、体内で生じる分解物まで含めて評価する必要があると指摘している。

成分表示や衛生管理を含む規制の必要性を指摘

施術者が専用機器を使って眉に色素を入れている様子。

眉などのアートメイクに使われるインクには複数の色素が含まれることがあり、アレルギーや成分表示の課題が指摘されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

  • 規制対象を拡大→ 不純物や無菌性、成分表示、施術者教育まで含めた規制が必要と提言した。
  • EUでは規制開始→ EUでは2022年から、タトゥー・アートメイク用インク中の有害化学物質の使用制限が適用された。
  • 成分表示が重要→ 使用成分を明確にすることで、健康被害時の原因究明や適切な治療につながる可能性がある。

 レビューでは、皮膚内に入った色素粒子が施術部位に残存する一方、近くのリンパ節からも検出された研究を紹介している。

 色素は、紫外線や体内での代謝などの影響を受け、分解して別の化学物質になる可能性もある。ただし、色素やその分解物が体内をどのように移動し、どの程度残るのか、長期的にどのような影響を及ぼすのかは、まだ十分に分かっていない。

 安全性を考える際には、色素そのものだけでなく、製造過程などで意図せず混入する不純物にも注意が必要となる。

 レビューでは、発がん性や遺伝子に変異を起こす性質が懸念される一部の「第一級芳香族アミン類」や「多環芳香族炭化水素」のほか、「金属不純物」やアレルギーの原因になり得る物質などが、規制の対象として検討されてきたと説明している。

 ただし、タトゥーやアートメイク用インクの使用が、人のがんを直接引き起こすと証明されたわけではない。長期的な影響を明らかにするには、成分が体内でどのように動くかを調べる研究に加え、施術を受けた人を長期間追跡する疫学研究が必要となる。

 健康上のリスクは、化学成分だけに限らない。インクの無菌性や適切な保管、器具の滅菌といった衛生管理も、感染や炎症のリスクに関わる。施術時に針で皮膚を過度に傷つけることも、問題につながる可能性がある。

 こうした点を踏まえ、研究グループは、インクの成分や不純物の制限だけでなく、無菌性、成分表示、施術者の教育まで含めた、タトゥーとアートメイクに特化した規制が必要と指摘した。

 なお、このレビューは2020年に発表されたもので、その後、EUでは2022年1月から、タトゥーとアートメイク用インクに関連して有害性が懸念される化学物質の使用制限が適用されている。

 研究グループは、すべての配合成分を明確に表示することが、健康被害が起きた際の原因究明や適切な治療、将来のインク除去に役立つと説明している。成分表示が充実すれば、施術後に赤みや腫れ、かゆみ、しこりなどが長引いた場合にも、使用したインクの情報を医療機関へ伝えやすくなり、原因を探る手掛かりになると考えられる。

 日本でも、前回の記事で見たように、アートメイクに使われる色素の成分表示や品質管理をどのように確保するかが重要な論点となる。

参考文献

Rigali S, Cozzi C, Liszewski W. Identification of the pigments used in permanent makeup and their ability to elicit allergic contact dermatitis. J Am Acad Dermatol. 2024 Sep;91(3):474-479. doi: 10.1016/j.jaad.2024.05.067. Epub 2024 May 31. PMID: 38825076.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38825076/

Giulbudagian M, Schreiver I, Singh AV, Laux P, Luch A. Safety of tattoos and permanent make-up: a regulatory view. Arch Toxicol. 2020 Feb;94(2):357-369. doi: 10.1007/s00204-020-02655-z. Epub 2020 Feb 6. PMID: 32030457.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32030457/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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