
眉のアートメイクでも、使用する色素の品質や施術時の衛生管理が安全性を左右する。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
アートメイクに関する研究を連載で見ていく。
眉、アイライン、唇などに色素を入れ、化粧をしたような状態を長期間保つアートメイク。美容施術として広がる一方で、感染症やアレルギー、色素の安全性など、複数の健康リスクも指摘されている。
ブルガリアの研究グループが、2014年から2024年までに発表された研究を分析したところ、アートメイクを含む施術に関連する潜在的な健康リスクとして、皮膚の細菌環境の乱れ、炎症や感染、アレルギー、色素の毒性などが挙げられた。
皮膚に色素を入れるアートメイク

目元のアートメイクでは、皮膚や粘膜に近い部位へ針を用いるため、衛生管理と安全性の確認が重要となる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 皮膚内に色素を注入→ アートメイクは針で皮膚のバリアを破り、眉や目元、唇などに色素を入れる施術。
- 医療的な用途もある→ 乳房再建後の乳輪の着色や、色素が失われた皮膚を目立ちにくくする目的でも使われる。
- 長期的な影響は未解明→ 皮膚マイクロバイオームや色素の安全性については、十分に研究されていない。
アートメイクは、専用の針を使って皮膚の内部に色素を注入し、眉や目元、唇などの輪郭や色を整える施術。
今回の論文では、伝統的なタトゥーとアートメイクを身体改変の一種としてまとめて検討している。
アートメイクには美容目的だけでなく、病気やけが、再建手術などで失われた外見を補う医療的な役割もある。乳房再建後の乳輪の着色や、色素が失われた皮膚を目立ちにくくする目的などで活用されてきた。
一方、アートメイクは刺青と比べて、美容や外見の補正を目的とする施術として受け止められやすい。そのため、皮膚の内部に色素を入れる処置であるにもかかわらず、色素の成分や感染、アレルギーなどのリスクに十分な注意が向けられない可能性もある。目的や見た目は刺青と異なるものの、針を使って皮膚内に色素を注入する点は共通しており、安全性について慎重に考える必要がある。
研究で指摘されている影響としては、針によって皮膚のバリア機能が破られると、細菌などが侵入しやすくなる点がある。皮膚表面に存在し、外部の刺激や感染から体を守る細菌や真菌などの集まりは、「皮膚マイクロバイオーム」と呼ばれる。アートメイクが皮膚の細菌環境に及ぼす長期的な変化については、十分に研究されていない。
研究グループは、「PubMed(パブメド)」などの4つのデータベースを検索。候補となった3760件の文献から重複や対象外の研究を除き、最終的に151件を分析した。
タトゥー全体では約0.5~6%に感染性合併症の報告

アートメイクは針で皮膚に色素を入れる施術であり、感染や炎症、アレルギーなどのリスクにも注意が必要。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 感染は約0.5~6%→ タトゥー関連施術全体では、細菌やウイルス、真菌による感染性合併症が報告されている。
- アレルギーは遅れて出ることも→ 赤みや腫れ、かゆみ、しこりなどが数カ月後や数年後に現れる場合がある。
- 色素成分にも注意→ 金属、不純物、防腐剤などが含まれる可能性があり、長期的な安全性の検証が必要。
分析によると、タトゥー施術に伴う感染症には、細菌、ウイルス、真菌によるものがあり、感染性合併症は、タトゥー関連の施術を受けた人の約0.5~6%で報告されている。この数値はアートメイクだけを対象としたものではない。
感染は、施術器具や色素の汚染のほか、施術者の手や唾液、施術部位に存在していた病原体などを通じて起こる可能性がある。皮膚に針を刺すことで表皮のバリアが破られ、局所の傷から微生物が侵入しやすくなるためだ。
色素や針に含まれる成分によるアレルギーも、タトゥー施術で多く報告されている。反応は施術直後だけでなく、数カ月後や数年後に現れる場合がある。赤み、腫れ、かゆみのほか、色素を入れた部分に硬いしこりや炎症性の結節が生じることもある。
安全性を左右する要素の一つが、皮膚に注入される色素だ。タトゥー用色素は、着色成分だけでなく、溶剤、増粘剤、防腐剤、不純物など、100種類を超える化合物を含み得る複雑な混合物とされる。
無機顔料には「ニッケル」や「クロム」などの金属が混入する場合があり、有機顔料には「芳香族(ほうこうぞく)アミン」などの不純物が含まれることがある。また、施術用の針から微細な金属片が生じ、皮膚や近くのリンパ節に沈着する可能性も報告されている。
さらに、一部の色素には、免疫毒性、遺伝毒性、発がん性が疑われる物質が含まれる可能性が指摘されている。ただし、タトゥーとがんとの因果関係は確立しておらず、長期的な研究が必要とされる。
色素の規制は国によって異なる

厚生労働省。(写真/Adobe Stock)
- 未開封製品から細菌→ 工場で密封されたタトゥーやアートメイク用色素から細菌が検出された報告がある。
- 製品管理が課題→ 成分や由来が不明な色素、保管や小分けの方法によって汚染リスクが高まる可能性がある。
- 共通基準は未整備→ 欧州などで規制は進む一方、国による差が大きく、世界共通の安全基準は十分ではない。
感染に関連して具体的に示された問題の一つが、使用される色素の細菌汚染だ。
過去の研究では、タトゥーやアートメイクに使われる色素から、酸素のある環境で増える「好気性菌」と、酸素の少ない環境で増える「嫌気性菌」の両方が確認された。工場で密封された未開封の製品から細菌が見つかったとの報告もある。色素が注入される真皮は酸素が比較的少ない環境であるため、嫌気性菌を含む汚染色素が入った場合には感染につながる可能性が懸念される。施術者が製品の外観や未開封であることだけで、無菌性を判断することは難しい。
論文では、施術者が色素をインターネットや地域の販売業者から購入することで、規制が十分でない製品を入手する可能性も指摘している。色素の由来や成分が明確でない製品が流通しているほか、保管や小分けの際に再利用容器を使うことも、汚染の原因になり得る。
欧州では、タトゥーとアートメイク用色素の安全性に関する決議が設けられてきた。さらにEUでは、2022年1月から、4000を超える有害性が懸念される化学物質について、タトゥーやアートメイク用色素での使用が制限された。一方で、国によって規制の実施状況に差があり、世界共通の安全基準は十分に整っていない。
日本では、厚生労働省がアートメイクを「医行為」と位置付け、医師免許を持たない者が業として行えば医師法に違反するとの見解を示している。一方、タトゥーについては、厚生労働科学研究の研究班が安全管理ガイドライン案を作成している。韓国では、タトゥー用色素について、禁止成分や使用基準を定める規制強化が進められている。日本でも、アートメイクに使われる色素の成分や品質をどのように管理するかが課題となりそうだ。
アートメイクは人気を高めているだけに、安全性についての理解は欠かせないだろう。
参考文献
Bakova D, Yaneva A, Harizanova S, Shopova D, Mihaylova A, Kasnakova P, Parahuleva N, Semerdzhieva M, Bakov K, Iliev I. Monitoring Health Risks Associated with Body Modifications (Tattoos and Permanent Makeup): A Systematic Review. Cosmetics. 2025; 12(1):8.
https://doi.org/10.3390/cosmetics12010008
韓国政府がタトゥー用インクの安全に関わる基準強化、2025年6月に新基準の施行へ、日本にも衛生管理のガイドラインが作られたが規制策は必要か
https://biyouhifuko.com/news/world/10654/
