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「GLP-1ダイエット」広告、美容医療の新たな問題?厚労省が委員会で議論

カレンダー2023.10.14 フォルダー 国内

ポイント

  • GLP-1ダイエットの自由診療での広がりを受けて、厚労省が広告などへの注意を呼びかけている
  • 未承認医薬品を広告するときには、はっきりと未承認薬であると分かりやすく説明する必要がある
  • 個人輸入の医薬品で健康被害が起きたときには救済対象外になるなど、リスクの理解が欠かせない

 いわゆる「GLP-1ダイエット」の自由診療での広がりを受け、厚生労働省が広告やインフォームド・コンセントへの注意を喚起している。その取り組みについて、2023年9月20日に開催された同省第13回医薬品等行政評価・監視委員会で議論された。

日本を含め世界的に品不足

セマグルチドは、世界的な品不足が指摘されている。(写真/Adobe Stock)

セマグルチドは、世界的な品不足が指摘されている。(写真/Adobe Stock)

 ヒフコNEWSでも紹介しているが、糖尿病の治療薬として開発されたセマグルチドが23年3月に日本において肥満症の治療薬として承認された。セマグルチドにより体重が減ることが証明され、病的な肥満の人に保険診療で使われる見通しになっている。

 ところが、この薬が承認前から自由診療においてダイエット目的で使われることが増えている。ウェブを検索すると、今回承認された注射薬だけではなく、承認されていない飲み薬が使われるケースも見られる。

 また、薬の適用となる肥満症はBMIが30以上などの条件を満たした場合となるが、自由診療ではこの条件に合う人だけに処方されるとは限らない。

※セマグルチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬として知られる薬。血糖値を下げるホルモンのインスリン分泌を促進し、血糖値を低下させる効果を持っている。もともと糖尿病治療を目的として開発されたが、体重減少の効果から肥満症治療を目的としても開発され、日本を含めて各国でそれぞれの治療目的で承認されている。なお、注射薬と飲み薬が存在しており、使用目的と薬の形態によって商品名が異なっている。糖尿病治療を目的とする場合、注射薬は「オゼンピック」という商品名で、飲み薬は「リベルサス」という商品名。肥満症治療を目的とする場合、注射薬は「ウゴービ」という商品名である。今後、肥満症治療を目的とした飲み薬が登場する可能性がある。

 こうしたセマグルチドのダイエット目的での使用は日本ばかりではなく、世界的に広がっている。日本では既に在庫逼迫が起きているが、海外でも入手しづらい状況になっている。

 この4月には、日本糖尿病学会が「不適切な薬物療法」は健康を脅かすと見解を発表している。

 GLP-1受容体作動薬が糖尿病の薬であるので、低血糖による意識障害などのトラブルの発生も心配されている。

個人輸入の薬で起きた健康被害は救済対象外

 厚労省は、ルールを守らないGLP-1ダイエットの広告に対して注意を呼びかけている。

 委員会では、自由診療を含む医療広告規制が示されて、広告しようとする場合の注意点が提示された。

 ヒフコNEWSでも伝えているが、医療広告においては原則として広告できる項目が限られている。ただし、限定が解除される要件を満たした場合、広告できる項目以外についても広告できることになっている。逆に言うと、条件を満たさないのに広告している場合はルール違反となる。

 厚労省は、自由診療での未承認薬の広告で次のルールを示している。

  • 国によって承認されていない場合にはそれを明示
  • 医師の個人輸入の場合にはそれを明示。
  • 同じ成分、性能の薬が承認されている場合はそれを明記
  • 海外で承認されている場合、添付文書の重大な副作用を示す。どの国でも承認されていない場合はそれを明記

 要するに、日本で未承認の薬を広告する場合は、それを明確に伝えることが欠かせない。

 なお、日本で承認されて、法律に従って売られた医薬品に関しては、適切な使用で重大な健康被害が生じた場合の救済制度があるが、個人輸入の医薬品はその対象外となる。

※厚生労働省は、「日本国内で医薬品医療機器等法を遵守して販売等されている医薬品については、それを適正に使用したにもかかわらず重大な健康被害が生じた場合に、その救済を図る公的制度(医薬品副作用被害救済制度)があります。 しかし、個人輸入された医薬品による健康被害については救済対象となりません」と説明している。

美容医療は多くの施術で違反広告

美容医療と歯科で指摘された違反広告と関連するキーワード。GLP-1は美容医療の3%だった。(出典/厚生労働省第13回医薬品等行政評価・監視委員会資料)

美容医療と歯科で指摘された違反広告と関連するキーワード。GLP-1は美容医療の3%だった。(出典/厚生労働省第13回医薬品等行政評価・監視委員会資料)

 ヒフコNEWSでも伝えているように、厚労省ではネットを通して医療広告を監視している。その結果を基に、医療機関などに規制を知らせたり、指導をしたりしている。さらに、得られた情報に基づいて、医療広告規制の事例集が改定されている。

 厚労省によると、美容医療の違反広告では、美容注射を筆頭に、さまざまなキーワードに関連した違反が確認されている。このうちGLP-1は全体の3%に当てはまっている。

 厚労省は、美容医療でのインフォームド・コンセントでは、治療を受ける人が安全性や有効性を理解した上で受診することが重要と強調する。消費者庁はチェックシートを作っているが、これを使い、分からないことがあれば、理解できるまで追加の説明を求めることも勧めている。

 GLP-1ダイエットを含め、広告にはルールがあることを理解し、違反広告に気を付けて、自分の身を守ることは重要だろう。

参考文献

糖尿病治療薬等の適用外使用に関連した注意喚起の取組
https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/001147575.pdf

肥満症対策の新薬セマグルチド、心臓病などの予防効果も
https://biyouhifuko.com/news/research/2958/

肥満症の新たな治療法?セマグルチド飲み薬が体重減少に効果
https://biyouhifuko.com/news/research/2373/

禁止されている美容医療の広告とは何?「ここをチェックして危ない美容医療から身を守ろう」 Vol.1
https://biyouhifuko.com/news/column/1672/

こんな医療広告は危ない!?「ここをチェックして危ない美容医療から身を守ろう」vol.2
https://biyouhifuko.com/news/column/1826/

限定解除要項と注意したい内容は?「ここをチェックして危ない美容医療から身を守ろう」vol.3
https://biyouhifuko.com/news/column/1968/

医薬品等を海外から購入しようとされる方へ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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