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幹細胞培養上清液に関連した死亡事例の発生、再生医療抗加齢学会が報告

カレンダー2023.10.27 フォルダー 国内

ポイント

  • 幹細胞培養上清液に関連した死亡事例が発生した
  • 学会が有効性や安全性についての根拠を十分に検討するよう求めた
  • 薬機法に基づいて承認されているものはなく、慎重な検討も求めた

 再生医療抗加齢学会が2023年10月、幹細胞培養上清液を使ったことによる死亡事例の発生を報告している。

法律に基づいて承認されているものはない

注射。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

注射。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 幹細胞培養上清液(幹細胞培養上清とも呼ばれる)は、幹細胞を培養した際の培養液のことで、自由診療で幹細胞培養上清の点滴や注射が行われている。その液の中には、幹細胞から分泌された有効成分が含まれていると考えられており、これによる若返り効果などが期待されている。

 このたび学会によると、幹細胞培養上清液を使った治療によって、死亡者が発生した。

 学会理事長森下竜一氏は報告の中で、「幹細胞培養上清液及びエクソソームの静脈投与につきましては、医療水準として未確立の療法であり、その有効性・安全性について、エビデンスに基づく十分な検討をお願いいたします」と要請している。

 続けて、「現時点では他家由来幹細胞培養上清液及びエクソソームに関して、医薬品医療機器等法の承認を取得した製品は存在しないことから、試薬等として流通しているものを医師が自らの責任において使用しているものと承知しておりますが、未承認の製品の使用に当たっては、関連法規を御理解の上、慎重にご検討いただくことをお願いいたします」と重ねている。

 死亡事例の詳細については明らかにされていないが、美容医療で盛んに行われている幹細胞培養上清液の使用に当たっては注意が必要と言えそうだ。

幹細胞培養上清の有効性や安全性は定まらない

幹細胞の培養上清液で死亡事例。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

幹細胞の培養上清液で死亡事例。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 ヒフコNEWSでも伝えているが、幹細胞培養上清液には、細胞からのさまざまな副産物が含まれ、そもそも有効なのか、また本当に安全なのかはよく分かっていないところもある。

 また、美容医療クリニックでは、エクソソームの点滴が行われていることもある。エクソソームは、細胞から分泌される有効成分を含む小胞の意味だが、こちらも同様に有効性や安全性については明らかではない。そもそもエクソソームは研究段階で実用化の段階にないと見なされている。そのため一般に使われているエクソソームは品質が安定していないと考えられている。

 学会が指摘するように、幹細胞培養上清液も、エクソソームも、薬機法に基づいて承認されたものはなく、未承認の製品が医師の自己責任で使用されている。万が一、事故が起きたときには、国の補償を受けることはできない。気を付ける必要があるだろう。

参考文献

幹細胞培養上清液に関する死亡事例の発生について
https://aarm.jp/news/

再生医療連載vol.1 日本独自の再生医療のルールを解説、知っておきたいこと
https://biyouhifuko.com/news/column/958/

再生医療連載Vol.2 再生医療委員会に5つの問題発覚、公正さ欠く実態など明らかに
https://biyouhifuko.com/news/column/1022/

再生医療連載Vol.3 エクソソームとはそもそも何か──第22回日本再生医療学会総会の会議を通して考える
https://biyouhifuko.com/news/column/1159/

「乳歯歯髄幹細胞培養上清」「MSC-QQC細胞」応用広がる、第111回日本美容外科学会(JSAS)
https://biyouhifuko.com/news/japan/1408/

「セクレトーム」や「パーソナライズ」美容皮膚科の実践とは、第111回日本美容外科学会(JSAS)
https://biyouhifuko.com/news/japan/1423/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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