エクソソームとPRP、2030年に向けて大幅成長の予測、その理由とは?
ポイント
- エクソソームやPRPのニーズが高まり、精製・調整キットの市場が成長
- エクソソームはがん研究、PRPは多くの分野で利用広がる
- エクソソームは人に使うためのルールが定まっていないのが課題
エクソソームやPRP(多血小板血漿)に必要となる精製・調整キットの市場が2030年までに1.8倍または1.6倍(22年年比)に成長する見込みだという。富士経済が23年11月に発表した。
エクソソーム市場が成長する背景は?
ヒフコNEWSでも伝えたが、10月に幹細胞培養上清液に関連した死亡事例が報告された。幹細胞賠償上清液は、その中にエクソソームが含まれるとよく強調されており、死亡事例の報告によってエクソソームへの関心も高まった。エクソソームは、細胞から分泌される有効成分を含む小胞の意味だが、まだ有効性や安全性については明らかではないとされる。美容医療においては医師の自己責任で使われている。
そうした中で、富士経済が「エクソソーム精製、PRP 調整キット市場を調査」を発表した。この報告によると、エクソソームとPRPを作るためのキット市場が成長していると明らかになった。
項目 | 22年 | 30年予測 |
---|---|---|
エクソソーム精製キット | 5.4億円 | 10.0億円(85.2%増) |
PRP調整キット | 6.8億円 | 11.2億円(64.7%増) |
具体的には、エクソソーム精製キットは、22年に5.4億円だった市場が、30年予測には85.2%増の10.0億円に増えると予想している。
報告によると、エクソソーム精製キット拡大の理由は、美容医療よりもむしろ、がん研究の進展によるもの。ヒフコNEWSで伝えているが、日本国内では、体内から取り出したエクソソームを分析することで、がんを診断する方法についての研究が進行中。さらに、さまざまな病気の治療薬としての可能性も検討されている。
エクソソームを人に使うためのルールがまだ整っていないというのは、これから問題となる可能性がある。幹細胞培養上清液に関連した死亡事例が報告され、エクソソームも注目される中で、国の公的な承認を得ていない点について不安の声が医療関係者から上がっていた。また、エクソソームは細胞を含んでいないことから、現行の再生医療のルールである法律(安確法)の対象外となる。これらの事情から、エクソソームを安全に使うための明確なルールを設けることが欠かせないと考えられる。
※「安確法」は「再生医療等の安全性等確保に関する法律」の略称である。
人に使うためのルールは重要
一方で、PRP調整キットは22年に6.8億円だったのが、30年に64.7%増の11.2億円になると予測されている。PRPのニーズが高まっている背景には、関節や腱・靱帯の治療に有効であることがあるという。それに、美容分野をはじめとして幅広い分野での利用が広がっていることがある。美容分野ではシワやたるみの改善などを目的として注射が行われている。
PRPについては、安確法に基づいて第二類再生医療等に分類されている。このためPRP治療を行うためには、認定再生医療等委員会での審査を通過し、適切なルールに沿って実施することが求められる。
エクソソームのルールが定まっていないのに対して、PRPについてはルールが存在するため、これは治療の安全性を確保する上で望ましい状況と言える。
参考文献
エクソソーム精製、PRP 調整キット市場を調査
https://www.fuji-keizai.co.jp/file.html?dir=press&file=23117.pdf&nocache
幹細胞培養上清液に関連した死亡事例の発生、再生医療抗加齢学会が報告
https://biyouhifuko.com/news/japan/4005/
エクソソームの安全性に注目集まる理由、幹細胞培養上清液での死亡事例の報告がきっかけに
https://biyouhifuko.com/news/japan/4036/
再生医療連載vol.1 日本独自の再生医療のルールを解説、知っておきたいこと
https://biyouhifuko.com/news/column/958/
再生医療連載Vol.2 再生医療委員会に5つの問題発覚、公正さ欠く実態など明らかに
https://biyouhifuko.com/news/column/1022/
再生医療連載Vol.3 エクソソームとはそもそも何か──第22回日本再生医療学会総会の会議を通して考える
https://biyouhifuko.com/news/column/1159/
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