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美容医療を含めた再生医療データの蓄積が始動、有効性や安全性の科学的根拠の情報“刈り取る”、日本再生医療学会

カレンダー2024.2.17 フォルダー 国内

ポイント

  • 日本再生医療学会が「REAP」ウェブサイトを開設、再生医療の治療データ登録を助ける
  • REAPを通じて、美容医療を含む再生医療の有効性や安全性の情報収集が期待される
  • 再生医療の透明性向上により、科学的根拠の蓄積や治療の信頼性向上につながる
REAP開始。(出典/日本再生医療学会)

REAP開始。(出典/日本再生医療学会)

 2024年2月16日、日本再生医療学会は、治療データの収集と分析を支援するための新しい仕組みである、『REAP(Regenerative medicine Evidence Accumulation Platform)』の立ち上げを発表した。

 REAPでは、美容医療を含めた自由診療で行われている再生医療の有効性や安全性についてのデータが積み上がっていく予定で、再生医療の科学的根拠の蓄積や信頼性向上につながる動きとなる。

有効性や安全性の情報が集まる

情報を集める。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

情報を集める。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 REAPを直訳すると、「再生医療エビデンス集積プラットフォーム」。科学的な根拠に基づいた再生医療を進めていくための大きなステップになりそうだ。「刈り取る」を意味するreapが名前に付くだけに、再生医療のデータを着実に得ていこうという考えが込められているのだろう。

 具体的にREAPとはデータを登録していくためのシステムで、電子カルテと連携し、治療データの自動登録を可能にすることで、効率的に情報を集めたり分析したりすることを可能にするものとなる。

 これまで日本再生医療学会では、薬機法に基づいて行われる再生医療について国の仕組みを通じてデータを集める仕組みを運営してきた。これはNRMD(National Regenerative Medicine Database)として呼ばれている。REAPでは、これに加えて、安確法に基づいて行われている自由診療や研究目的の再生医療からのデータ収集を可能とするものになる。

※「薬機法」は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、「安確法」は「再生医療等の安全性等確保に関する法律」のそれぞれ略称である。安確法は再生医療法とも呼ばれる。

 同学会によると、REAPの特徴は次のようにまとめられる。

  • REAPの目的 → 再生医療の治療データを登録し、有効性を検証することで、治療の科学的根拠を積み上げる。
  • 利用するメリット → 再生医療の症例データを蓄積し、先進医療申請や薬事開発に利用可能。治療データの学会発表や論文への応用が期待される。
  • 調査項目の策定 → 日本再生医療学会と関連学会の合同で治療ごとに必要な調査項目を検討。国と共通の調査項目、診療科目や治療ごとの固有な調査項目を含める。
  • 運営 → 第三者機関である日本再生医療学会が提供。

 日本で再生医療を行う施設はすべて提供計画を国に出す必要があるが、この申請機関が「REAP構築」という申請をして、調査項目などを決めた上で、REAPを利用するという手順になる。

 日本再生医療などを含めたワーキンググループを運営するなど、運用開始までにはいくつかステップを踏む必要がある。公式のウェブサイトを通じて申請して利用を申し込む形で、利用する施設がどれくらい増えるかは重要だろう。

  • 再生医療施設の申請プロセス → 日本で再生医療を行う施設は、提供計画を国に申請する必要があり、この申請施設が「REAP構築」申請を行い、調査項目を決定した上でREAPを利用する。
  • 運用開始のプロセス → 日本再生医療学会を含むワーキンググループが作られるなど、運用開始までに複数のステップが必要。施設は公式ウェブサイトを通じてREAPの利用申請を行う。

再生医療の透明性が高まる

科学的根拠の情報が増える。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

科学的根拠の情報が増える。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 美容医療においても再生医療が盛んに行われているものの、その有効性や安全性に関する確たる根拠が不足している課題が存在している。ヒフコNEWSで伝えているが、副作用についての情報の報告が不十分である可能性が指摘されている。幹細胞培養上清の使用に関連した死亡事例が報告されたことがあるが、その実態が不明であるといった問題も起きていた。

 データが集まっていけば、再生医療に関する情報の透明性が向上して、科学的根拠がはっきりして、より安心して治療を受けられるようになり、また、信頼性が高まることで、再生医療の進歩も加速する可能性もある。

参考文献

REAPウェブサイト公開のお知らせ
https://www.jsrm.jp/news/news-14241/

自由診療で行われる再生医療の有害事象、国内調査が過少報告の可能性を指摘、国立がん研究センターなどのグループが報告
https://biyouhifuko.com/news/japan/4492/

エクソソーム規制強化、美容医療ルール作りに注目、日本再生医療学会が厚労省で提言
https://biyouhifuko.com/news/japan/4254/

再生医療連載vol.1 日本独自の再生医療のルールを解説、知っておきたいこと
https://biyouhifuko.com/news/column/958/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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