
コスメとバイオマイボームの関連に関心。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
肌のマイクロバイオームを活かした化粧品開発は、どこまで現実味を帯びてきたのか。
スペインの研究グループが2026年4月に最新の見方を示した総説論文を公表している。
まず、肌のマイクロバイオームとは何か

スキンケアをより良くするためには?画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 肌にも多くの微生物がいる→ 細菌や真菌などが皮膚に存在し、肌の状態を支えている。
- バランスが大切→ マイクロバイオームは、バリア機能や免疫、肌の安定に関わっている。
- 化粧品の考え方も変化→ 肌の微生物バランスをできるだけ乱さない設計が重視されている。
肌には、細菌だけでなく、真菌、ウイルス、古細菌、ダニなどを含む多様な微生物が存在している。こうした微生物の集まりが皮膚のマイクロバイオームで、皮膚のバリア機能、免疫の調整、pHや皮脂環境の維持などに関わっているとされる。
研究グループは、キューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属などの常在微生物が、病原体との競合や免疫調整を通じて肌の安定に役立っていると説明している。一方で、このバランスが崩れる「ディスバイオーシス」が起こると、アトピー性皮膚炎やニキビのような炎症性皮膚疾患に関わる可能性があるという。
例えば、キューティバクテリウム・アクネスは皮脂を代謝して短鎖脂肪酸を作り、病原体が増えにくい酸性環境を保つ働きを持つとされる。スタフィロコッカス属では、スタフィロコッカス・エピデルミディスなどが抗菌作用を持つ物質を作り、黄色ブドウ球菌などと競合しながら免疫の調整にも関わる。コリネバクテリウム属は皮膚バリアの成熟や細菌同士の競合、汗の性質への影響などに関わるとされる。
このほかにも、ストレプトコッカス属には免疫調整に関わる可能性が示唆され、ミクロコッカス属には抗酸化に関わる可能性があるという。さらに、乳酸菌やビフィズス菌、クロストリジウム属は、皮膚の免疫の成熟に関わる可能性があり、真菌やダニも含めて、皮膚の生態系全体の安定に役立っていると整理している。
そのため化粧品でも、単に感触や香りがよいだけでなく、肌の微生物バランスをなるべく乱さない設計が重視されるようになってきた。
さらに論文では、肌のマイクロバイオームは生まれつきの条件だけで決まるのではなく、年齢、性別、肌質、pH、皮脂量、遺伝といった内的要因と、気候、住む地域、汚染、食事、ストレス、生活習慣、化粧品、薬剤などの外的要因の両方に影響されると整理している。肌の微生物バランスは常に一定ではなく、体の状態や生活環境によって変化し続けるものだという。
そのため、化粧品を考える際にも、単に「良い菌を増やす」といった単純な発想ではなく、年齢や肌状態、生活環境に応じて、肌のバリア機能や微生物バランスをどう支えるかという視点が重要になる。
今回の総説では、一般的な化粧品の多くは、適切な濃度やpHで設計されていれば、健康な肌のマイクロバイオームを大きく乱すわけではないと整理している。保湿剤やエモリエント、弱酸性設計の製品は、肌のバリア機能や微生物バランスの維持に役立つ可能性もあるという。
何を使ってマイクロバイオームに働きかけるか

シャンゼリゼ周辺にあるロンジェビティ・クリニック「Cible Skin」。(写真/編集部)
- さまざまな成分が使われる→ 生きた菌、菌を育てる成分、菌由来成分、死菌などを活用する考え方がある。
- 期待はあるが発展途上→ 保湿や赤み軽減などの報告はあるものの、研究規模はまだ小さい。
- 基準づくりが課題→ 「マイクロバイオームにやさしい」と表示するための統一した基準は、まだ十分に整っていない。
そうした中で注目されているのが、肌のマイクロバイオームをなるべく乱さず、むしろ良い方向に整えようとする化粧品だ。
論文では、その主な方法として、プロバイオティクス、プレバイオティクス、ポストバイオティクス、パラプロバイオティクスを挙げている。簡単に言えば、生きた菌そのものを使う方法、肌にいる良い菌を増えやすくする成分を使う方法、菌が作り出した成分を使う方法、死菌や菌体成分を使う方法となる。
このうち、生きた菌を使うプロバイオティクスは話題性が高いが、化粧品として安定して保存したり配合したりすることが難しい。一方で、菌の代謝産物や菌体成分を使うポストバイオティクスやパラプロバイオティクスは、より扱いやすい方法として期待されている。
総説では、こうした考え方に基づくさまざまな試験例が紹介されている。例えば、ガラクトオリゴ糖を配合した美容液、生きた菌や菌由来成分を使った処方、ニキビ向けのゲル、乳酸菌由来成分を使った処方などである。これらの報告では、保湿、赤みの軽減、バリア機能の改善、皮脂の調整、シワや色むら、肌のきめや質感の改善などが示されている。
ただし論文は、この分野をまだ発展途上だとみている。多くの試験は規模が小さく、期間も短い。さらに、「マイクロバイオームフレンドリー」と表示するための統一基準もまだ十分に整っていない。そのため、肌のマイクロバイオームを活かす化粧品は有望ではあるが、現時点ではまだ研究段階で、今後はより大規模で条件をそろえた試験が必要だとしている。
肌のマイクロバイオーム活用は単なる流行語ではなく、化粧品開発の新しい方向性になりつつある。ただし、どの成分が、どの肌に、どのように役立つのかは、これからさらに見極めていく必要がある。
ヒフコNEWSでは、フランスのパリに拠点を置くCIBLE SKIN(サイブル・スキン)を取材し、スキン・ロンジェビティという観点から、マイクロバイオームに注目する動きを伝えた。今後、研究がさらに進み、マイクロバイオームへの関心は一層高まる可能性がある。
参考文献
Taléns-Visconti R, Diez-Sales O, Nácher A. Cosmetic Interventions for Skin Microbiome Modulation: Current Strategies and Future Directions. Skin Res Technol. 2026 Apr;32(4):e70352. doi: 10.1111/srt.70352. PMID: 41988834; PMCID: PMC13084527.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41988834/
世界初「スキン・ロンジェビティクリニック」、慢性炎症に着目し酸化ストレスやマイクロバイオームの乱れに対処 スキンケアと美容医療を組み合わせ CIBLE SKIN創業者のアクニン氏とジネフリ氏に聞く
https://biyouhifuko.com/news/interview/17016/
