肌質改善を目的として美容医療で使われるポリヌクレオチド(PN)注射は、どの深さに注入するかによって施術の負担が変わる可能性がある。
韓国の延世大学などの研究グループが、顔の左右でポリヌクレオチドを注入する深さを変えて比較したところ、真皮より深い「真皮下」への注入でも、これまで主に用いられてきた「真皮内」への注入に劣らない細かいシワの改善が確認された。
一方で、真皮下への注入では施術時の痛みが少なく、施術後に生じる皮膚表面の一時的な盛り上がりも確認されなかった。
研究成果は2026年8月4日、美容皮膚科学誌で発表された。
顔の左右で「真皮内」と「真皮下」を直接比較

ポリヌクレオチド注射では、注入する深さによって痛みや施術直後の見た目が変わる可能性がある。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 研究対象→顔のシワ改善を希望する40人を対象に、左側へ真皮内注入、右側へ真皮下注入を行って比較した。
- 施術方法→ポリヌクレオチド製剤「リジュラン」を3週間おきに計3回注入し、注入位置は超音波で確認した。
- 評価項目→3D画像解析などを使い、細かいシワや肌の粗さ、毛穴、弾力性、痛み、施術後の盛り上がりを調べた。
ポリヌクレオチドは、美容医療で肌質の改善を目的として使われる注入製剤の一つ。目元や頬などに注入し、細かいシワや肌の質感などの改善を目的に使用されている。
これまでの研究や施術では、皮膚の浅い部分である真皮内に少量ずつ注入する方法が多く採用されてきた。一方、真皮内への注射は細かく何度も針を刺す必要があり、痛みを伴いやすいほか、注入部分が一時的にポコポコと盛り上がって見えることがある。
そこで研究グループは、より深い真皮下に注入しても、同程度の肌質改善効果を得られるのかを検証した。
研究には、顔のシワ改善を希望する19歳以上の40人が参加した。平均年齢は31歳で、37人が女性、3人が男性。このうち画像による有効性の評価ができた37人について解析した。
参加者全員の顔の左側には真皮内、右側には真皮下にポリヌクレオチド製剤「リジュラン(Rejuran)」を注入した。1回につき片側最大1mLを使用し、3週間おきに計3回施術した。
真皮内では針を使って複数箇所に少量ずつ注入したのに対し、真皮下ではカニューレと呼ばれる細い管を使って製剤を広げるように注入した。実際に目的とした深さへ注入できているかは超音波で確認した。
研究グループは3D皮膚画像解析装置「Antera 3D」を使い、細かいシワのほか、シワ、肌の粗さ、毛穴、メラニン、ヘモグロビンなどを評価した。さらに肌の弾力性や、施術後の痛み、皮膚表面の盛り上がりなども調べた。
痛みは3回とも真皮下で少なく、皮膚の盛り上がりはゼロ

真皮下へのポリヌクレオチド注入では、真皮内注入に劣らない細かいシワの改善が確認され、施術時の痛みは少なかった。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- シワ改善→細かいシワは真皮内と真皮下の両方で改善し、真皮下注入は真皮内注入に劣らない効果が確認された。
- 痛み→施術時の痛みは3回すべてで真皮下への注入の方が少なく、施術時の負担が軽い傾向を示した。
- 盛り上がり→施術直後のエンボッシングは真皮内側だけに見られ、真皮下側では3回の施術を通じて確認されなかった。
その結果、細かいシワを示す指標は、真皮内と真皮下のどちらでも施術前と比べて改善した。
特に研究の主要な評価項目となった施術12週後の細かいシワでは、真皮下への注入は真皮内への注入と比べて、効果が一定以上劣っていないことを示す「非劣性」が確認された。9週後についても同様の結果となった。</p>
12週後の細かいシワの指標そのものを比較すると、真皮下側の方が真皮内側より低く、統計学的な差も確認された。ただし研究者らは、ほかの肌質指標を含めた両者の差は全体として小さく、真皮下の方が優れていると結論づけるのではなく、「短期間の効果はおおむね同等」と解釈している。
一方ではっきりした違いが見られたのが、施術時の身体的な負担だ。
100点満点で評価した痛みは、1回目が真皮内60.2に対して真皮下47.7、2回目が59.9に対して49.7、3回目が56.5に対して46.3。3回すべてで真皮下への注入の方が痛みが少なかった。
さらに、注射した部分が一時的に盛り上がる「エンボッシング(embossing)」は真皮内の注入側だけで確認され、真皮下の注入側では3回の施術を通じて一度も確認されなかった。美容施術では効果だけではなく、施術直後の見た目や痛み、ダウンタイムも重要になるため、こうした違いは実際の施術方法を選ぶ上で意味を持つ可能性がある。
今回の研究には、今後確かめるべき点も残っている。追跡期間は12週間と短く、効果がその後どの程度続くかは分からない。また、全員で左側を真皮内、右側を真皮下とし、左右への施術法のランダムに割り付けていないため、顔の左右差や生活習慣による影響などが結果に反映された可能性がある。参加者も平均31歳と比較的若く、9割以上が女性だった。
なお、研究はリジュランのメーカーであるファーマリサーチ(PharmaResearch)から資金提供を受けて実施された。著者らは利益相反はないと報告している。
それでも今回の結果からは、真皮下への注入でも、真皮内と同程度の細かいシワ改善を期待できる可能性が示された。さらに真皮下では痛みが少なく、施術直後の皮膚の盛り上がりも見られなかったことから、施術を受ける人の負担を抑える方法として選択肢になり得る。今後、より幅広い年代や長い追跡期間で効果を確かめることで、どの注入方法が適しているのかがより明確になりそうだ。
参考文献
Bae H, Kim SB, Heo YR, et al. Efficacy and Safety of Intradermal Versus Subdermal Injection of Polynucleotide for Facial Improvement: A Prospective Split-Face Study. Journal of Cosmetic Dermatology. 2026;25(8):e71108.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jocd.71108
