
ヒアルロン酸フィラーによる血管閉塞が疑われる場合、早期の評価と救済治療が皮膚障害を防ぐために重要となる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
ヒアルロン酸フィラーによる重い合併症として知られる血管閉塞が起きたとき、治療によって皮膚への血流が十分に戻ったのかを客観的に確認できる可能性が出てきた。
中国の研究グループが、色素を使ったインドシアニングリーン血管造影(ICGA)を用いた研究を、2026年7月に発表した。
見た目だけでは治療効果の判断が困難

ヒアルロン酸フィラー注入後に血管閉塞が起きると、皮膚への血流低下により痛みや変色、壊死などにつながる可能性がある。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 血管閉塞→ヒアルロン酸フィラーで血流が妨げられると、痛みや皮膚の白さ、変色などが現れ、重症化すると壊死や変形につながる可能性がある。
- 研究対象→ヒアルロン酸フィラーによる血管閉塞が確認された26人を対象に、救済治療の前後で皮膚への血流を比較した。
- 評価方法→インドシアニングリーン血管造影を使い、血液が流れ込む速さや最大信号までの時間など3つの指標を数値化した。
ヒアルロン酸フィラーは美容医療で広く使われている一方、まれではあるものの、重大な合併症として血管閉塞が知られている。フィラーが血流を妨げると、皮膚に十分な血液が届かなくなり、痛みや皮膚の白さ、網目状の色調変化などが現れる。対応が遅れたり血流の回復が不十分だったりすると、皮膚の血流が足りずに組織が死んだり変形したりする可能性もある。
通常は、痛み、皮膚が白くなる変化、網目状の変色、毛細血管再充満時間の遅れ、皮膚温の変化などから血管閉塞を判断する。
こうした診察による評価には主観的な部分もある。各種のエコー(超音波)検査を用いることで、血管の位置や血流異常を確認し、ヒアルロン酸を分解するヒアルロニダーゼを投与するかどうかの判断に役立つ。
ところが、治療後にその先の皮膚へどの程度血液が戻ったかまで直接数値化することは難しい。
そこで研究グループが注目したのがインドシアニングリーンだ。この色素を静脈から投与し、近赤外線を利用して組織に流れ込む血液を可視化する検査となる。形成外科領域では皮膚移植の際、組織に十分な血液が届いているかを調べるためにも利用されている。
今回の研究では、血管そのものの閉塞部位だけではなく、その先にある皮膚組織の血流回復を評価する手段として利用した。
研究は、単一施設で過去の診療記録を検討した研究だ。2025年7月から2026年3月までに受診した患者が対象となった。54人が検討され、そのうちヒアルロン酸フィラーによる血管閉塞ではなかった人や、治療前後のインドシアニングリーンのデータがそろっていなかった人などを除き、最終的に26人を解析した。
救済治療を画像検査のために遅らせることはせず、治療前後にインドシアニングリーンを投与して比較した。
評価したのは、血液が組織へ入ってくる速さを反映する「イングレス・レート(ingress rate)」、インドシアニングリーンの信号が最大になるまでの時間を示す「タイム・トゥ・ピーク(time to peak、TPP、注、原論文もTPP)」、さらに蛍光信号の立ち上がりを数値化した「カーブ・イングレス(curve ingress)」という3つの指標。
これらを組み合わせ、治療後に皮膚の血流がどの程度回復しているのかを調べた。
血流の立ち上がりが改善

ヒアルロン酸フィラーによる血管閉塞では、治療後に皮膚組織まで血流が回復しているかを確認することが重要になる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 血流改善→救済治療後は、血液が組織へ流れ込む速さが上昇し、最大信号に達するまでの時間も短縮した。
- 追加治療との関係→追加治療が必要だった2人では、治療直後の血流改善が26人の中で最も小さかった。
- 今後の活用→治療後の血流回復を数値で確認することで、追加処置や慎重な経過観察が必要なケースを早期に見極められる可能性がある。
結果は、3つの指標で一貫して血流の改善を示すものだった。
血液が組織に流れ込む速さを示すイングレス・レートの中央値は、治療前の12.50から治療後には16.20へと上昇した。
最大の信号に達するまでの時間であるタイム・トゥ・ピークは31.46秒から23.87秒へと短縮した。さらにカーブ・イングレスも6万3515.95から7万7862.55へと増加した。
いずれも統計学的に有意な変化だった。救済の治療後には、血液がより速く、より良好に皮膚組織へ流れ込む方向への変化が画像上で捉えられたことになる。
特に注目されたのが、その後に追加の治療が必要になった2人だ。
この2人は、カーブ・イングレスが治療後にどれだけ改善したかを割合で比較したとき、26人の中で最も改善が小さかった。研究グループは、治療直後の血流回復が乏しい場合、診察所見と組み合わせることで、より慎重な経過観察や早い段階での追加治療を検討する手掛かりになる可能性があるとみている。
施術を受ける側にとって重要なのは、血管閉塞が疑われる症状を放置しないことだ。ヒアルロン酸フィラーの注入後に、強い痛みが続く、皮膚が白くなる、網目状に変色するといった変化が現れた場合には、通常の腫れや内出血とは異なる可能性がある。血流が途絶えた状態が長く続くほど皮膚への影響が大きくなるため、早い段階で施術を受けた医療機関などに連絡し、適切な評価と治療を受けることが重要になる。
この研究のポイントは、インドシアニングリーンで血管閉塞そのものを見つけることだけを目指したのではなく、「治療後、皮膚組織まで十分に血流が回復しているのか」を数値で捉えようとしたところにある。
超音波検査などで閉塞した血管を確認しながら治療し、さらにインドシアニングリーンでその先の皮膚組織への血流を確認するといった、異なる画像検査を組み合わせる考え方につながる可能性がある。
今回の研究は26人を対象とした単一施設の後ろ向き研究で、追加治療が必要だったのも2人にとどまるが、治療前後の皮膚血流を客観的に数値化できる可能性を示した点は重要だ。今後、血流回復が十分か、追加処置が必要かを早期に見極める手掛かりになる可能性がある。
参考文献
Li G, Zhou G, Wang M, et al. Indocyanine Green Angiography for Objective Perfusion Monitoring After Hyaluronic Acid Filler-Induced Facial Vascular Occlusion. Journal of Cosmetic Dermatology. 2026;25. DOI: 10.1111/jocd.71097.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jocd.71097?msockid=194773f36883676d090e6554699266c3
