国際的に展開している経営コンサルティング会社であるマッキンゼーが2024年2月に美容医療のトレンドについてレポートを公開している。コロナ禍でも美容医療の拡大は続き、今後も人気は続くという見通しを出した。そうした中でも美容医療の人気施術には変化もあるという見方を示した。
「ヒアルロン酸顔」が問題に
ヒフコNEWSでも紹介しているように、国際的に美容医療の件数は増加が続いている。マッキンゼーも22年の米国調査から美容医療の関心が高いことを示している。経済的な状況が変化しているものの、美容医療の売り上げは保たれていると説明する。
人気の施術としては、ボツリヌス療法やヒアルロン酸フィラーがトップツーの位置にある。エネルギーデバイスによる若返りや脱毛も人気がある。
ボツリヌス療法の人気の一方で、ヒアルロン酸フィラーについては「フィラー疲れ」が起きているといわれ、バイオスティミュレーターに移行しているという。いわゆるヒアル顔が問題になり、ヒアルロン酸フィラーを使った人に特有の顔立ちが好ましく思われなくなったのは大きな要因だ。過度のフィラー注入により顔の自然な表情が失われ、不自然な外見になることを指す。
バイオスティミュレーターは、日本ではECM製剤として広がりを見せているが、皮膚を刺激してコラーゲンを生成させるようなアプローチが海外でも人気を高めつつある。バイオスティミュレーターは、自己のコラーゲン生成を促進することで自然な若返り効果をもたらし、長期間にわたり持続する効果が期待されているため、消費者の間で人気が高まっているという。
注目される6つのトレンド
マッキンゼーでは6つのトレンドを展望している。
- 支出を減らす傾向
- ブランドロイヤルティ
- 多様な消費者
- 技術革新
- チャネルの多様化
- 未開拓の市場
これらマッキンゼーの指摘に沿って、今後について考えてみよう。
景気が悪くなると支出を減らすという人は6割だった一方で、治療をやめると回答したのは7%にとどまったという。今後、消費者はコスパやタイパを意識するようになり、美容医療でも低価格なものに惹かれる傾向があるという。日本でも美容医療の低価格化が進んでいるが、事故につながらないかは心配されるところだ。
ブランドについては人気のブランドや治療法を続ける傾向があるということ。例えばボツリヌス療法だと、52%が現在のブランドや治療を続ける意向という。美容医療は新しいものが出てくるが、安全性や有効性は重要で、実績があるものを続けるというのは合理的であるように見える。
多様な消費者というのは、美容医療を受け入れる人が増えていることと関係するようだ。81%が非外科的治療に受け入れられると回答する調査があるといい、男性の美容医療が増える傾向なども美容医療ユーザーの多様化につながると見られている。学会調査では、「Instagramフェイス」から「TikTokフェイス」への変化があるという。確かに、顔が動くと、美容医療の施術によっては不自然に見えることもある。動いても不自然ではないというのは重要だろう。
技術革新という点では、バイオスティミュレーターなどが進化している。美容医療のメーカーが企業を買収する動きも続いており、新しいテクニックが広がる方向性も考えられている。
チャネルの多様化というのは、美容医療が増えているほか、メディカルスパの拡大などを言っているようだが、メディカルスパはトラブルの温床になっており、今後は問題になってきそうだ。美容医療でも専門性のない医師が関わることが米国で問題視されており、専門性の問題も出てくると見られる。
未開拓の市場という点は、「フェンスシッター」という日和見の人が多いと見られているようだ。状況を見ていて、美容医療をやらないけれども、関心はあるという人たちだ。今後、新たに美容医療を利用するようになるかもしれないが、こうした人がトラブルに遭わないようにすることは重要だろう。
美容医療のトレンドが変化していることや、SNSが美容医療に影響するという点は面白い。日本でも関連する動きが見られるので、今回のレポートを見て、確かにそうだなという点がもっと出てくるのかもしれない。