日々のケアをしっかりしていても、年齢を重ねた肌には悩みが付き物。特に、「シワ」にお悩みの方は多いのではないでしょうか?
ファンデーションで隠そうとすればするほど浮き上がってくる細かいシワ、写真に写る笑顔の自分の、顔のあちらこちらにくっきりと表れるシワ…見つけてしまうと、いつも、いつまでも気になってしまうものです。
とはいえ、一度できてしまったシワを自力で消すのは、時間も根気も必要で、なかなか難しいところ。そこで頼りになるのが、クリニックのシワ治療メニューです。
シワは、乾燥が原因の「ちりめんジワ」表情のクセが原因の「表情ジワ」肌の下垂が原因の「たるみジワ」に分けられます。それぞれ原因が別なので、治療方法も異なります。
この記事では、シワのタイプ別に、クリニックではどのような治療法が用意されているのかをご紹介します。クリニックでの、早め早めの的確な治療が、5年後10年後の若々しい肌に繋がります。
ちりめんジワには
乾燥やコラーゲンの減少で、肌がしぼんだようになることが原因の細かいちりめんジワには、
- 保湿成分を肌の奥まで送り込む「メソポレーション」
- レーザーを細かく点状に照射することで、古い肌を新しい肌へと入れ替えるとともに、熱作用で肌を引き締め、新しいコラーゲン増殖することで肌のハリが甦る「CO2フラクショナルレーザー」
- 薬剤を注入して肌の内側からボリュームアップを叶える「ヒアルロン酸」「エランセ」
といった治療が効果的です。
表情ジワには
眉を上げた時のおでこの横ジワや、顔をしかめた時の眉間の縦ジワといった、表情ジワ。知らず知らずのうちに身についてしまった、表情のクセによって現れるものです。クセなので、意識して抑えるというのは難しいですし、意識しすぎても表情が不自然になってしまいます。そこで効果を発揮するのが、表情筋の動きを抑制してシワを防ぐ「ボトックス」です。
ボトックスは、シワを作る動きをする表情筋に注射することで、筋肉の動きを止めてシワにならなくなります。効果の持続は4〜6ヶ月程度なので、繰り返し受ける必要がありますが、続けることでシワの予防にも繋がるため、シワがくっきりと刻まれる前に受けることをおすすめします。
たるみジワには
年齢を重ねたせいで起こる皮膚の下垂が原因で現れる、ほうれい線・マリオネットライン・ゴルゴラインのようなたるみジワには、
- 皮下にボリュームを足してシワを埋める「ヒアルロン酸」「エランセ」
- 真皮層を高周波で強力に加熱することでコラーゲンを収縮、増殖させることでたるんだ肌を引き締める「RF」
- これまでは手術でしかアプローチのできなかったSMAS筋膜を超音波で縮めることで土台からのリフトアップを叶える「HIFU」
といった治療があります。ちりめんジワ同様に、CO2フラクショナルレーザーも効果が期待できます。
どんな治療なの?
ちりめんジワ | 表情ジワ | たるみジワ | 費用の目安 | |
メソポレーション | 〇 | 1回 10,000~20,000円※導入する薬剤により異なる |
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CO2フラクショナル レーザー |
◎ | 〇 | 1回 20,000~70,000円 |
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ボトックス | ◎(マイクロボトックス) | ◎ | 一単位 8,000~50,000※種類により異なる |
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ヒアルロン酸 | ◎ |
1本あたり 30,000~200,000 ※種類により異なる |
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エランセ | 〇 | 持続期間2年タイプ 1本(1cc)70,000~120,000 |
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RF | ◎ | △ | ◎ | 全顔1回 100,000~300,000※機種により異なる |
HIFU | ◎ | △ | ◎ | 全顔1回 60,000~400,000※機種により異なる |
(◎とても効果的 〇効果あり)
メソポレーション
電気の力で、美容有効成分を肌に浸透させる治療法です。
肌に特殊な電気パルスを流すことで、細胞と細胞の間に小さな隙間をつくります。その隙間から有効成分を肌の奥深くまで浸透させることで、成分を本来の効果を発揮する場所(表皮基底層や真皮層)まで届けることができます。
シワ治療のために使われる成分は、
- コラーゲンを体内で生成する際に欠かせない成分であるビタミンC誘導体
- コラーゲンの増殖を促すプラセンタ
- 肌細胞の再生を促す成長因子(EGF、FGF、IGF)
- 保湿成分(ヒアルロン酸、セラミド、アミノ酸) などです。
有効成分が行き渡った肌は、瑞々しく潤い、内側からハリのあるふっくらとした肌となるため、細かいシワや乾燥ジワの改善へと繋がります。2~4週間の間隔で、4~5回の治療が理想的です。
CO2フラクショナルレーザー
炭酸ガスレーザーで肌に目に見えないほどの微細な穴をあけることで、熱作用により肌を引き締めるとともに、自己治癒能力によるコラーゲン増殖効果で肌にハリを取り戻しシワを改善する治療法です。
肌表面にレーザーを細かい点状に照射します。肌は、肉眼では見えないほど微小の穴ができた状態になります。すると真皮層では、できた穴を塞ぐために、繊維芽細胞がコラーゲンやエラスチンといった真皮成分を、せっせと作り始めます。そこに、繊維芽細胞を活性化する成長因子を含んだ薬剤を浸透させると、肌の再生効果がより高まるため、照射後に成長因子が配合されたマスクや美容液を使用するクリニックもあります。
肌の凹凸をなめらかに整える効果があり、シワ以外にも、ニキビ跡や傷跡、毛穴の開きにも有効だとされています。クリニックでは「スマートサイド」「eco2」などの機器を用いた治療が行われています。
レーザーを照射するときには痛みがありますが、クリーム麻酔などをすることで痛みは軽減されます。ダウンタイムは、照射直後から強力に日焼けをした後のようなヒリヒリ感が半日ほど、赤みが3日ほど続きます。また、翌日から穴の部分が細かいかさぶたとなるため、触るとザラザラとした触感になり、1週間程度その状態が続きます。かさぶたが剥がれ落ちると、つるつるとした美肌を実感できます。1~2か月の間隔で、複数回の治療が推奨されます。
ボトックス
筋肉の働きを抑制する薬剤「ボトックス」を注射して、表情筋の動きを和らげ、表情ジワをできにくくする治療です。
ボトックスは、正式名称を「A型ボツリヌス毒素製剤」といいます。ボツリヌス菌が産生するたんぱく質なのですが、脳の指令を筋肉に伝える神経伝達物質・アセチルコリンの働きをブロックする、という特性があります。そのため、筋肉には脳からの指令が伝わりにくくなり、筋肉の動きが弱くなります。
ボトックスを、額や眉間など、表情ジワの気になる部分に注射すると、その部分の表情筋が過剰に収縮することがなくなり、シワが寄りにくくなります。シワが深く定着することの予防にもなります。
また、微量のボトックスを皮膚の浅い層に細かく注射することで、筋肉には作用せずに表面繊維の働きを弱めるという「マイクロボトックス」という注入技術もあります。自然な表情を保ちつつ、たるみを改善し、小じわや毛穴の開きといった肌の凹凸を滑らかにする効果が得られます。また皮脂腺や汗腺の活動も抑制するため、過剰な皮脂や汗の分泌を防ぎ、ニキビ肌や脂性肌の改善にも効果があると言われています。
クリニックでは、「ボトックスビスタ」「ニューロノックス」「ゼミオン」などの薬剤が使用されています。
ボトックスの効果は、注射の2,3日後から現れて、2週間ほどで安定します。効果の持続は3~4か月なので、定期的な治療が必要です。
ヒアルロン酸
もともと肌に存在する、高い保水力が特徴の成分、ヒアルロン酸を原料とする製剤を使って、シワや溝を持ち上げ、目立たなくする治療法です。
加齢によってボリュームを失った箇所へ注入することで、顔全体をリフトアップさせてほうれい線やゴルゴラインといった、肌のたるみによって現れるシワを改善します。また、深いシワの直下に注入して、溝を埋めるように使われることもあります。
クリニックでは「ジュビダーム」「レスチレン」「ニューラミス」「テオシアル」などのヒアルロン酸が使用されています。治療したい部位や効果によって製剤が使い分けられており、製剤の種類によって価格も変わってきます。
ヒアルロン酸は徐々に体に吸収され、最終的には無くなってしまうため、1年~2年ごとの定期的な治療が必要です。
エランセ
ヒアルロン酸と同様に、皮下に注入するシワ治療法です。手術用の縫合糸やフェイスリスト用の糸といった、体内で溶けて吸収される糸に使用されているPCL(ポリカプロラクトン)という素材でできています。
注入することで肌のボリュームアップが叶うのはもちろんですが、コラーゲンを増やす効果が高く、海外では「コラーゲンブースター」とも呼ばれています。肌の質感の向上やハリ感のアップといった効果が実感でき、また持続期間が長いことで人気を集めています。持続期間は製剤の種類によって変わりますが、1年〜4年と言われています。
RF
真皮層〜皮下組織に熱ダメージを加えることで、肌を強力に引き締めるとともに、肌の自己再生を促しコラーゲンを増生させる治療法です。RFはRadio Frequencyの略で、日本語では高周波と呼ばれています。
照射すると、プラスとマイナスの電気刺激によって細胞がゆれて、摩擦熱が発生し、真皮層にあるコラーゲンを熱により収縮させます。また、ダメージを受けた細胞は、ヒートショックプロテインというタンパク質を働かせて、自ら回復しようとコラーゲンを作り始めます。このコラーゲン増産効果は照射後一か月くらいから肌の弾力UPという形で現れ始め、3~6か月ほど持続します。ハリがUPし、深いほうれい線やブルドッグライン、フェイスラインのたるみの改善が期待できます。
使用する電極の数によってモノポーラ(1極)式、バイポーラ(2極)式、トライポーラ(3極)式、マルチポーラ(4極以上)式がありますが、皮下の深い部分までRFが届き、引き締め効果の高いといわれているのはモノポーラ式となります。クリニックでは「e-plus」「イントラジェン」「サーマクール」「マエストラ」といったRF治療機が使用されています。
治療中は肌の奥に熱感を感じ、痛みもありますが、冷却機能と組み合わせることで、表皮へのダメージを抑えるためダウンタイムはほとんどありません。機種によって、1回の治療で半年〜1年もつものと、複数回治療が必要なものがあります。効果の度合いやかかる費用も変わってきますので、自分の希望にあった機器を選びましょう。
HIFU
HIFUは高密度焦点照射式超音波治療(High Intensity Focused Ultrasound)の略称で、超音波を虫眼鏡で太陽光を集めるように、エネルギーを集中して照射することで、狙った部分を加熱する事が可能なリフトアップ治療機です。
皮下脂肪の下にある表情筋を包む薄い膜のことをSMAS筋膜といい、加齢によってこの筋膜が緩むことが皮膚をたるませる一因となっています。このSMAS筋膜にアプローチできる唯一のたるみ治療器がHIFUとなります。皮膚の深い部分にあるSMAS層まで超音波エネルギーが届くことで、緩んだ筋膜を熱で引き締めます。皮膚の土台となるSMAS筋膜が縮むことで、土台からのリフトアップを即時的に実感することが可能です。また、3種類のカートリッジにより深さを変えて照射できるため、真皮へ照射してコラーゲンを増やすなどの効果も期待できます。
クリニックでは「ウルセラ」「ダブロ」「ウルトラセル」「ウルトラフォーマー」といった機器が使用されています。
機種によって痛みや効果の度合い、金額が異なります。ダウンタイムはほとんどありませんが、赤みや腫れが一時的に現れることがあります。筋肉痛のような痛みが数日続くことがあります。半年~1年ごとの治療が理想的ですが、シワが深い場合にはより短い間隔での治療を勧められることもあります。
まとめ
美容クリニックで受けられるシワ治療をご紹介しました。一口にシワ治療といっても、様々な方法があって、シワの種類・症状の度合いによって選ぶ治療法が変わってくることがお分かりいただけたでしょうか?いざクリニックにかかる際には、効果やリスクについて、事前に医師としっかり話し合って、納得しておくことが大切です。ご自身に合う方法を見つけて、満足のいく治療を受けたいですね。
記事監修
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山下真理子先生
京都府立医科大学を卒業して、医師に。 大阪市内で美容医療に携わりながら、医療教育にも従事。 コラムの執筆やモデル業の傍ら、17公式ライバーとしてライブ配信も行っている。