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美容医療市場がコロナ前水準に、5つのトレンドが勢いづく理由とは

カレンダー2023.6.26 フォルダー 国内

ポイント

  • 日本の美容医療市場はコロナ以前の水準まで回復し、22年には4080億円に達した
  • 日本では医療脱毛やボツリヌス療法のような非外科治療が消費者の間で人気の選択肢となっている
  • オンライン診療、定額制サービスなど、美容医療をより身近にする動きが活発になっている

 市場調査の矢野経済研究所が2023年6月23日に発表したところによると、2022年度の美容医療市場規模がコロナ以前の水準まで回復した模様だ。非外科治療の広がり、オンライン診療やサブスクリプションなどの普及などが市場拡大の背景にある。

非外科的治療が引き続き人気

美容医療市場がコロナ前水準に。(出典/矢野経済研究所)

美容医療市場がコロナ前水準に。(出典/矢野経済研究所)

 ヒフコNEWSでは同研究所の21年度の市場規模についてのレポートも伝えたが、美容医療市場はコロナの影響で19年の4070億円から20年には3920億円まで落ち込んだ。しかし、21年に3990億円まで回復し、22年にはコロナ以前の4080億円の水準に達した。

 日本の美容医療市場は多様で、美容外科や形成外科、皮膚科、美容皮膚科に加え、内科や歯科などさまざまな診療科が診療を提供している。治療は手術を行う外科的治療と、手術を行わない非外科的治療に分かれる。非外科的治療が市場規模の拡大を引っ張っている。

 同研究所の過去のレポートによると、人気のある非外科的治療には、医療脱毛やボツリヌス療法、ニキビやニキビ痕の治療、美肌、しみ・あざ・ほくろ除去、ケミカルピーリングなどがある。世界的な傾向として、非外科的治療が人気で、日本でもこの傾向は続きそうだ。

美容医療を身近にする活発な動き

広がるオンライン診療。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

広がるオンライン診療。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 同研究所では、美容医療のトレンドとして次の点を挙げている。

  • オンライン診療の台頭
  • サブスクリプションサービスを提供する医療施設の増加
  • ドクターズコスメの取り扱いを強化する医療施設の増加
  • 「しわ・たるみ取り」「ケミカルピーリング」「脱毛」「わきが・多汗症」等の施術が好調
  • 内科・歯科等の他の診療科からの非外科施術での参入の増加

 手術の需要が減少する中で、手術以外の治療をより身近にする動きが活発になっている。オンライン診療は薬の処方を簡単にしており、サブスクリプションサービスの月額定額などの仕組みは、医療脱毛、ニキビ治療、美肌、しわ・たるみなどの非外科的治療を受ける人の経済負担のハードルが低くしている。

 これら5つのトレンドの背景にある要因の一つは、ここまで見てきたような非外科的治療の普及だろう。同研究所は、参入する医療施設の増加、女性の美容医療への心理的障壁の低下、男性需要の拡大により、23年以降も市場拡大が続くと推定している。

トラブルに注目が集まる美容医療

ハイフ施術による事故件数の推移。出典/消費者庁 消費者安全調査委員会

ハイフ施術による事故件数の推移。出典/消費者庁 消費者安全調査委員会

 残念なことに、美容医療をめぐる問題が世間の注目を集めている。

 国民生活センターの調査によると、女性からの相談はエステ脱毛が多いが、医療行為による相談もある。HIFU(高密度焦点式超音波治療、集束超音波治療)によるやけどなどのトラブルも報告されている。こちらはエステで行われているHIFUによるトラブルが多いが、医院での被害報告もある。

 美容医療の利用者が増えるに伴って発生する課題をいかに解決していくのかは引き続き重要だ。

 エステ脱毛のトラブルは、美容医療の課題を考える上で貴重な教訓となるかもしれない。ヒフコNEWSで伝えたように、エステ脱毛で過去倒産件数を記録したのは、利用者や店舗数の増加による人手不足とサービスの質の低下が原因だった。さらに、競争の激化で広告宣伝費がかさみ利益が圧迫された。男性専門医療脱毛「ウルフクリニック」が突然閉鎖され、関係会社が破産手続きに入るなど、医療脱毛においてもこうした状況はある。

 美容医療においても、利用者や医院の増加、人手不足や広告宣伝費の増加など、状況は似ている。利益が圧迫され、運営が立ちゆかなくなれば、不十分な治療やトラブルにつながる可能性もある

 このような事態を防ぐためにも、このような被害に遭わないよう、美容医療を受けることを検討する人は、慎重な情報収集が一層求められるだろう。

参考文献

コロナの衝撃から立ち直った美容医療、急がれる課題への取り組み
https://biyouhifuko.com/news/japan/1283/

美容整形手術の最新動向、脂肪吸引が豊胸術を抜き、世界で最も人気のある美容整形手術に
https://biyouhifuko.com/news/world/925/

コロナ禍の中で美容医療を受ける人が急増、リモートワークの影響などか?
https://biyouhifuko.com/news/world/1049/

成人年齢18歳に、10代の脱毛エステや医療のトラブル相談が急増
https://biyouhifuko.com/news/japan/1696/

美容医療関連の相談件数が前年より33%増加、国民生活センター
https://biyouhifuko.com/news/japan/810/

エステティックサロンなどでの日本のハイフ関連事故の詳細明らかに、国の消費者安全調査委員会が報告書
https://biyouhifuko.com/news/japan/629/

ウルフクリニック「経営関与の会社」破産へ、美容医療の信頼性に懸念抱かせかねない問題
https://biyouhifuko.com/news/japan/2002/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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