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肥満症薬による体重減少でたるみ発生、手術の選択肢も、米国形成外科学会が考え方を示す

カレンダー2023.11.30 フォルダー 海外

ポイント

  • GLP-1受容体作動薬は糖尿病の薬だったが、肥満症の薬として注目されている
  • 薬を使うことによる大幅な減量で、余分な皮膚やたるみが問題になることがある
  • 減量後の余分な皮膚を取り除き、体の輪郭を整える手術が有効であることがある
肥満。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

肥満。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 世界的に肥満症薬が注目を集めており、もともと使われてきた糖尿病のための薬までが足りなくなっている状況になり問題となっている。日本でも美容やダイエット目的では使う薬ではないという学会からの注意を促す文章も発表されている。

 一方で、この薬を使った後に美容医療が役割を果たすところがあるようだ。余分な皮膚が発生し、たるみが問題になることがあるためだ。つまり、それを除くような美容整形手術のニーズが生まれる。米国形成外科学会が2023年11月に考え方を示している。

体重を減らすことに伴い皮膚が余る

海外で肥満症薬として販売されているセマグルチド。商品名はWegovy。(写真/Adobe Stock)

海外で肥満症薬として販売されているセマグルチド。商品名はWegovy。(写真/Adobe Stock)

 ヒフコNEWSで何度も伝えているが、「GLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1薬)」と呼ばれる薬が世界中で人気を博している。この薬はもともと糖尿病の薬として使われていたが、体重を減らす効果が注目され、肥満症薬としても承認される動きが出ている。

 最初に肥満症薬として米国で承認されたのがセマグルチドと呼ばれる薬で、同じ効果を持つ複数の薬が承認される予定になっている。日本でもこの11月に薬価収載され、公定価格が定まった。

※セマグルチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬として知られる薬。血糖値を下げるホルモンのインスリン分泌を促進し、血糖値を低下させる効果を持っている。もともと糖尿病治療を目的として開発されたが、体重減少の効果から肥満症治療を目的としても開発され、日本を含めて各国でそれぞれの治療目的で承認されている。なお、注射薬と飲み薬が存在しており、使用目的と薬の形態によって商品名が異なっている。糖尿病治療を目的とする場合、注射薬は「オゼンピック」という商品名で、飲み薬は「リベルサス」という商品名。肥満症治療を目的とする場合、注射薬は「ウゴービ」という商品名である。今後、肥満症治療を目的とした飲み薬が登場する可能性がある。

 肥満症薬は、米国形成外科学会の報告によれば、体重を減らすのだが、それに伴い余分な皮膚が発生して、たるみを引き起こすという。たるんだ皮膚を取り除く手術が必要な場合もあるという。

「ボディリフト」により体の輪郭を整える

手術。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

手術。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 米国形成外科学会によれば、「ボディリフト」を行うことで、余分な皮膚や脂肪を取り除き、組織を引き締めて、体の輪郭を整えられる。ボディリフトには次の種類がある。

  • 上半身のリフトアップ: これには胸、背中、脇の施術が含まれ、腕のリフト(腕形成術)と乳房のリフト(乳房形成術)も行われることがある。
  • 下半身リフトアップ: 通常、腹部、ウエスト、ヒップ、おしり、太ももなどに対応する。この手術は、広い部位の余分な皮膚と脂肪を取り除き、組織を再配置することで、よりスリムで引き締まった外観を目指す。

 学会によると、ボディリフトを受けるのに適しているのは、体重が安定し(増えたり減ったりしている状態にない)、健康している人で、手術をすることでたるみを除去できると判断できる人。

 手術は一度に複数の部位に対して行えるものの、完全な回復までには時間を要するという。手術痕が残ることもあり、それが目立たないように手術の場所を工夫する必要もあるようだ。

参考文献

Ozempic weight loss is affecting plastic surgery – here’s how
https://www.plasticsurgery.org/news/articles/ozempic-weight-loss-is-affecting-plastic-surgery-heres-how

「肥満症治療薬は美容などに使う薬ではない」、日本肥満学会が声明
https://biyouhifuko.com/news/japan/4533/

体重減少効果で注目の「GLP-1薬」、まれながら重い副作用の報告、米国医師会雑誌が注意呼びかけ
https://biyouhifuko.com/news/world/4374/

ダイエット目的の薬が不足、厚生労働省に糖尿病治療薬の要望書、関連団体が提出
https://biyouhifuko.com/news/japan/4213/

肥満症対策の新薬セマグルチド、心臓病などの予防効果も
https://biyouhifuko.com/news/research/2958/

肥満症の新たな治療法?セマグルチド飲み薬が体重減少に効果
https://biyouhifuko.com/news/research/2373/

「GLP-1ダイエット」広告、美容医療の新たな問題?厚労省が委員会で議論
https://biyouhifuko.com/news/japan/3731/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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