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「遠くまで行きたければ、みんなで行け」 自然な仕上がりを支える見えない研修 麻布ビューティクリニック院長・加藤聖子氏に聞く Vol.3                                                                 

カレンダー2026.5.24 フォルダーインタビュー
加藤聖子(かとう・きよこ)氏。麻布ビューティクリニック(AZABU BEAUTY CLINIC)理事長兼院長。(写真/編集部)

加藤聖子(かとう・きよこ)氏。麻布ビューティクリニック(AZABU BEAUTY CLINIC)理事長兼院長。(写真/編集部)

加藤聖子(かとう・きよこ)氏
麻布ビューティクリニック(AZABU BEAUTY CLINIC)理事長兼院長

  • 医師教育の場を作る→ 注入治療を体系的に学ぶ機会として、院内で研修を行っている。
  • 実践に近い形で学ぶ→ 協力者を迎え、治療方針や手技を医師同士で確認している。
  • 院内全体の水準を保つ→ 経験を共有し、チームとして診療の質を高めることを重視している。

──クリニック内での医師教育にも力を入れている。

加藤氏: 日本の注入治療のレベルは高いと思います。ただ、それでも底上げは必要です。美容医療は、大学を卒業した後に体系的に学ぶ機会が十分にある分野ではありません。医療でありながら、通常の診療科とは少し違う位置づけで見られがちな面もあります。

 だからこそ、学ぶ場が必要だと思っています。海外には、企業が関わる教育施設やトレーニングの仕組みがありますが、日本では企業の中に医療行為を伴う教育施設を設けることは簡単ではありません。そうなると、クリニックが場所を提供し、実際の診療に近い形で学ぶ機会を作る必要があります。

──研修はどのように行っている?

加藤氏: 当院では、診療が終わった後などに、医師向けの研修を行っています。月に数回、夕方から夜にかけて、協力してくださる方をお迎えし、実際に治療をしながら技術指導や意見交換をします。

 内容は、その医師が学びたい分野に合わせます。ボツリヌス療法のこともありますし、ヒアルロン酸や目の下の治療などを扱うこともあります。協力者を調整するのは大変ですが、スタッフもよく協力してくれています。

 一般的なモニターというと、症例写真の公開を前提にしたものを想像されるかもしれません。ただ、私たちの研修では、写真を公開することが目的ではありません。医師同士が目の前で治療方針や手技について話し合うことを了承してくださる方に協力していただいています。目的はあくまで教育です。

──研修で重視していることは?

加藤氏: それぞれの医師が個別に診療していると、普段は他の医師がどのように診て、どのように治療しているのかは見えにくいものです。だからこそ、一人の来院者を前にして、どこを見るのか、どの治療を選ぶのか、どのように注入するのかを共有する時間は大切です。

 これは技術指導であると同時に、意見交換でもあります。自分が教えているつもりでも、逆に他の医師から学ぶことがあります。これまで続けてきた方法について、別のやり方の方がよいかもしれないと気づくこともあります。

 ラーニングピラミッドという考え方があります。読む、見る、実際にやってみる、そして人に教える。その中でも、人に教えることが最も学びになるといわれます。私自身も、教えることは自分が学ぶことだと実感しています。

──クリニック全体の水準を一定に保つ。

加藤氏: 当院には複数の医師がいます。ベテランの医師は、それぞれ独自に診療している部分もありますが、クリニック全体として一定の水準を保つことは大切です。

 そのためには、一人の医師だけに依存しない体制が必要です。私が海外の講演などで不在にすることもありますが、その時にも診療の質が大きく変わらないようにしておきたいと考えています。

 注入治療は、医師一人の技術だけで成り立つものではありません。院内で経験を共有し、必要なところを確認し合うことで、チーム全体として水準を上げていく。その積み重ねが、自然な仕上がりや安心感につながるのだと思います。

  • 技術を共有する→ よい技術は個人で抱え込まず、次の医師に伝えるべきだと考えている。
  • 美容医療も医療→ 短期間で覚えて終わりではなく、責任を持って学ぶ姿勢が必要。
  • 学び続ける姿勢→ 顔を扱う治療だからこそ、医師は鍛錬と教育を続けることが大切。

──技術を個人だけのものにしない。

加藤氏: 美容外科では、以前は自分の技術をあまり人に教えないという雰囲気もあったと思います。独立されると困るとか、技術を共有したくないという考え方もあったのかもしれません。

 ただ、私はよい技術は共有すべきだと思っています。「早く行きたければ一人で行け。遠くまで行きたければみんなで行け」という言葉があります。美容医療全体をよくしていくには、一人だけがうまくなるのではなく、全体を底上げしていくことが必要だと思います。

 以前、「なぜ自分の技術を人にシェアするのですか」と聞かれたことがあります。その時に私は、心臓外科の医師にも同じ質問をするのだろうかと思いました。医療であれば、よい技術を次の人に伝えるのは自然なことです。そこから意見が出て、さらによい方法に変わっていく。それが医療としての進歩だと考えています。

──短期間で覚えればよい、というものではない。

加藤氏: 美容医療は、ビジネス的な側面が強いと思われがちです。もちろん自由診療ですから、経営の視点も必要です。ただ、私は美容医療も医療だと考えています。

 医療であれば、研修して学ぶのは当たり前です。十分に学ばないまま治療をすることは、本来あってはならないはずです。例えば、ボツリヌス療法の一部の部位だけを短期間で覚えて、すぐに治療を始めるというやり方もあるかもしれません。ビジネスとしては効率的に見えるかもしれませんが、医療としてそれでよいのかは疑問です。

 注射をした後に、何か問題が起きたらどうするのか。顔を扱う以上、技術だけでなく、責任を持つ姿勢が必要です。美容医療だから軽く考えてよい、ということはないと思っています。

──学び続けることが大切。

加藤氏: 整形外科にいた時の教授から、医師は主役ではなく、誰かの人生の黒子であれという考え方を教わりました。医師は自分のためではなく、人を助けるためにいる。その言葉は今も残っています。

 美容医療でも、それは同じだと思います。顔を扱う治療だからこそ、医師が主役になるのではなく、その方がよりよく過ごすための手助けをする立場であるべきです。

 そのためには、学び続け、鍛錬する時間が必要です。美容医療も医療であるということを前提に、技術指導や教育を続けていく。学び続けること、教え続けることが、美容医療の根本だと考えています。(続く)

プロフィール

加藤聖子(かとう・きよこ)氏。麻布ビューティクリニック(AZABU BEAUTY CLINIC)理事長兼院長。(写真/編集部)

加藤聖子(かとう・きよこ)氏。麻布ビューティクリニック(AZABU BEAUTY CLINIC)理事長兼院長。(写真/編集部)

加藤聖子(かとう・きよこ)氏

麻布ビューティクリニック(AZABU BEAUTY CLINIC)理事長兼院長。1997年東京大学医学部卒業。同年、東京大学医学部附属病院整形外科学教室に入局。都内総合病院で整形外科を中心に、麻酔科、救命救急医療なども経験した。その後、都内美容外科に勤務し、フェイスリフト、脂肪吸引、目や鼻の形成術などの手術を執刀。2008年、麻布ビューティクリニックを設立。注入治療を中心に、違和感のない自然な美しさを目指した美容医療に取り組んでいる。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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