
加藤聖子(かとう・きよこ)氏。麻布ビューティクリニック(AZABU BEAUTY CLINIC)理事長兼院長。(写真/編集部)
加藤聖子(かとう・きよこ)氏
麻布ビューティクリニック(AZABU BEAUTY CLINIC)理事長兼院長
- ヒアルロン酸だけではない→ 深い層を支えるにはヒアルロン酸、浅い層を自然に整えるにはコラーゲンが選択肢になる。
- 目の下に適した場面→ 皮膚が薄い目の下では、コラーゲンの方が自然に仕上がりやすい場合がある。
- 包括的に考える→ 注入剤だけでなく、機器治療や肌治療も含めて組み立てる流れになっている。
──注入治療では、ヒアルロン酸だけではない流れが出てきている。
加藤氏: 今は、ヒアルロン酸だけでよいという時代ではなくなってきていると思います。もちろん、ヒアルロン酸にはヒアルロン酸の良さがあります。支える力があり、長持ちし、形を作ることができる。これは大きな利点です。
年齢を重ねると、皮膚や脂肪だけでなく、骨も痩せてきます。そうした変化に対して、深いところに入れて土台を作るには、ヒアルロン酸はとてもよい治療です。骨の代わりに支えるような役割は、コラーゲンでは追いつかない部分があります。
一方で、顔全体を自然に整えることを考えると、ヒアルロン酸だけでは足りない場面もあります。不自然に見えたり、細かな段差に対応しにくかったりする場面があるためです。
これからは、ヒアルロン酸とコラーゲンをどう使い分けるかに加えて、注射だけでなく、機器治療や肌の治療も含めて、包括的に考えていく時代になると思います。
──コラーゲン注入には、どのような可能性があるのか。
加藤氏: 私は、これからコラーゲンが注目されていくと思っています。特に目の下のクマの治療では、コラーゲンでなければ自然に仕上がりにくいと感じる場面があります。
目の下は皮膚が薄い場所です。そこにヒアルロン酸を入れると、透けて見えたり、不自然に見えたりすることがあります。そうした薄い皮膚や表面の細かな段差を整えるには、コラーゲンが合う場面があります。
皮膚はコラーゲンが多い組織です。そこに、皮膚に近いものを補うという発想は自然だと思います。最近は、スキンブースターやバイオスティミュレーターのように、肌に働きかけ、コラーゲン産生を促すことを目的とした治療も出てきています。コラーゲン産生を促すという考え方は合理的です。一方で、皮膚に多く存在するコラーゲンを直接補うという発想も分かりやすいと思います。
──ヒアルロン酸とコラーゲンを使い分ける。
加藤氏: それぞれの良さを生かして、層や目的によって使い分けるということです。深いところを支えるにはヒアルロン酸が向いています。一方で、皮膚に近い層を自然に整えるには、コラーゲンが合う場面があります。
また、長持ちすることだけが、よい治療の条件ではありません。ボトックスなどのボツリヌス療法も数カ月で効果が切れますが、多くの方が受けています。大事なのは、どれだけ長く残るかだけではなく、よい結果が出るかどうかです。
コラーゲンも同じで、持続期間だけを見るのではなく、仕上がりの質を見る必要があると思います。
- 注射で大切な見通し→ どこに、どの製剤を、どのくらい入れるかを事前に組み立てることが大切。
- 一度で完結しない→ 最初からすべてを行わず、変化を見ながら少しずつ整えていく。
- 細かなニーズが技術を磨く→ 自然で繊細な仕上がりを求める声が、注入治療の進化につながっている。
──注射にも、手術と同じように手順や設計がある。
加藤氏: 注射は、ただ製剤を入れればよいというものではありません。最初に、どこに、どの製剤を、どのくらい入れるのかを、頭の中で組み立てておく必要があります。
例えば、この方の皮膚であれば、ここに入れるとこれくらい持ち上がるだろう、という目安を持てることが大事です。そうした見通しがあって初めて、自然な仕上がりにつながるのだと思います。
その意味では、注射は手術と似ているところがあります。手術では、ここをこうして、次にこうして、最後にこう仕上げるという流れがあります。注射も同じで、途中で「やはりこちらにしようか」と迷いながら行っているうちは、まだ十分とは言えないと思います。
また、注射の手技にも美しさがあります。カニューレや針の扱い、清潔操作、注入の流れには、一つ一つ意味があります。美しい手技は、美しい結果につながります。
ただ、そうした細かな部分は、教科書だけでは伝わりにくいものです。実際の手技を見て学ぶことが必要だと思います。
──最初からすべてを行うわけではない。
加藤氏: 注入治療は、手術と違って、一回で完結する治療ではありません。効果が切れる時期があり、定期的に続けていく治療です。だからこそ、最初からすべてを行うことが、必ずしも正解ではないと思います。
診察をしていると、「ここも治療した方がよい」「あそこも整えた方がよい」と感じることはあります。ただ、初めての方に最初からすべてを提案するのではなく、まずは変化を実感していただきやすいところから始めることが大事です。そこで喜んでいただければ、次の治療につながっていきます。
注入治療は、継続していく中で、その方に合わせて少しずつ整えていく治療だと思っています。
──日本人や韓国人の細かなニーズも、技術を高めている。
加藤氏: 日本人や韓国人は、とても細かいところを気にされる方が多いと感じています。少し段差が残っている、ここが気になる、というように、非常に繊細です。医師にとっては大変な部分もありますが、そうした細かなニーズに応えることで、医師の腕も上がっていくと思います。
来院される方々が医師を育てている面もあるのではないでしょうか。細かな違和感を見逃さず、それにどう対応するかを考え続けることで、注入治療の技術は磨かれていきます。
美容医療では、派手に変えることよりも、自然に、美しく整えることが大切だと考えています。そのためには、ヒアルロン酸だけに頼るのではなく、コラーゲンや機器治療も含めて、その方に合った方法を選ぶことが必要です。
注入治療は、これからさらに進化していくと思います。アジア人の顔に合った自然な美容医療を考える上で、コラーゲンは重要な選択肢になっていくのではないかと見ています。(終わり)
プロフィール

加藤聖子(かとう・きよこ)氏。麻布ビューティクリニック(AZABU BEAUTY CLINIC)理事長兼院長。(写真/編集部)
加藤聖子(かとう・きよこ)氏
麻布ビューティクリニック(AZABU BEAUTY CLINIC)理事長兼院長。1997年東京大学医学部卒業。同年、東京大学医学部附属病院整形外科学教室に入局。都内総合病院で整形外科を中心に、麻酔科、救命救急医療なども経験した。その後、都内美容外科に勤務し、フェイスリフト、脂肪吸引、目や鼻の形成術などの手術を執刀。2008年、麻布ビューティクリニックを設立。注入治療を中心に、違和感のない自然な美しさを目指した美容医療に取り組んでいる。
