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GLP-1薬のセマグルチドに失明につながる視神経症リスク、副作用の可能性に注意、NAIONという病気リスクが上昇、米国ハーバード大学の研究グループが7月に明らかに

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目の病気になるリスクを高める可能性が明らかになった。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

目の病気になるリスクを高める可能性が明らかになった。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 GLP-1受容体作動薬のセマグルチドに、新たな副作用リスクが報告された。この薬は日本の自由診療でダイエット目的での処方が問題視されている。安易に長期間にわたって薬を使うことには注意が必要になる。

 ハーバード大学の研究グループが2024年7月3日に米国医師会の発行する医学誌「JAMA Ophthalmology」で、セマグルチドが非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)のリスクと関連していることを明らかにした。

失明につながる病気の可能性を疑う

ダイエット目的での処方が広がるGLP-1受容体阻害薬。セマグルチドの飲み薬と注射薬。(写真/Adobe Stock)

ダイエット目的での処方が広がるGLP-1受容体阻害薬。セマグルチドの飲み薬と注射薬。(写真/Adobe Stock)

  • セマグルチド→2型糖尿病および肥満症の治療に使用されるGLP-1受容体作動薬。
  • 用途→糖尿病治療(注射薬は「オゼンピック」、飲み薬は「リベルサス」)と肥満症治療(注射薬は「ウゴービ」)の二つ。
  • 自由診療での使用→日本国内で体重減少目的での使用が増加し、薬が不足して問題に。
  • NAION→視神経への血流不足による病気で、失明の重要な原因の一つ。
  • 研究の目的→セマグルチドとNAIONの関連を確認するための大規模研究。
  • 研究対象→NAIONの既往がない1万6827人の糖尿病患者と肥満または過体重の人たち。

 セマグルチドは、2型糖尿病および肥満症の治療に使用されるGLP-1受容体作動薬であり、その使用は世界的に急増している。

※セマグルチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬として知られる薬。糖尿病治療を目的として開発されたが、体重減少の効果から肥満症治療を目的としても開発された。セマグルチドは、糖尿病治療を目的とする際、注射薬は「オゼンピック」という商品名、飲み薬は「リベルサス」という商品名で販売されている。同じ成分ではあるが、肥満症治療を目的とする場合、注射薬は「ウゴービ」という商品名で販売されている。

 日本国内で、セマグルチドなどのGLP-1関連の薬は、体重を減らす目的で自由診療で入手する人が増えている。本来、糖尿病などの病気の治療に使用されるが、薬が不足して入手しづらい状況になり問題となっている。国や学会が美容目的での使用を問題視するまでになった。

 今回報告されたNAIONは、視神経への血流が不足することによって引き起こされる病気。視神経は目で物を見るために必要な神経なので、この病気は失明の重要な原因の一つ。これまでNAIONのリスクを上昇させる要因としては、高血圧、糖尿病、高脂血症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群などが知られている。

 研究グループは経験的な観察からセマグルチドがNAIONと関連していることを疑い、大規模な研究で確かめることにした。研究は17年12月1日から23年11月30日までの間に、ハーバード大学の関連病院であるマサチューセッツ総合病院のデータを用いて行われた。

 研究対象はNAIONの既往がない1万6827人で、糖尿病の人たちと肥満または過体重の人たち。偏りを減らす方法により、セマグルチドを処方されたグループと、処方されていない人を比較した。その上で、NAIONの累積発生率やリスクが分析された。

糖尿病でも肥満や過体重でもリスク上昇

薬には効果とともに副作用のリスクがあることを認識する必要がある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

薬には効果とともに副作用のリスクがあることを認識する必要がある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 糖尿病患者群の結果→セマグルチドを処方されたグループのNAION累積発生率が8.9%、処方されていないグループが1.8%。リスクは4.28倍。
  • 肥満または過体重患者群の結果→セマグルチドを処方されたグループのNAION累積発生率が6.7%、処方されていないグループが0.8%。リスクは7.64倍。

 研究の結果、糖尿病患者群では、セマグルチドを処方されたグループのNAION累積発生率が8.9%、処方されていないグループでは1.8%。セマグルチドのグループでは、リスクが4.28倍とされた。

 肥満または過体重患者群では、セマグルチドのグループが6.7%、処方されていないグループが0.8%。セマグルチドのグループは、リスクが7.64倍とされた。

 セマグルチドは、交感神経を活性化させて、神経の血流に影響を与える可能性があると考えられている。

 ヒフコNEWSでもこれまでに伝えているように、GLP-1受容体作動薬は他の副作用の可能性も指摘されている。薬は効果とともに副作用も存在しており、安易な使用には注意することが重要だ。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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