
研修医のうち美容医療に進むのは?画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
初期研修を終えた後、そのまま美容医療へ進む若手医師は、どのような人たちなのか。
連載「美容医療流入」第2回では、実際に美容医療を最初の進路に選んだ医師を調べた報告を見ながら考えていく。
2026年に公開された報告では、一般的な専門研修に進まず、美容医療を選んだ若手医師の特徴が検討された。査読前のプレプリントではあるが、研究を行ったのは大阪医科薬科大学などのグループだ。
対象は1施設で確認された4人に限られ、「直美」と呼ばれる進路選択を実際のデータで捉えようとした数少ない内容と位置付けられる。
どう読めばいいのだろうか。
222人中4人が、美容医療を最初の進路に選んだ

初期研修を終えて直接美容医療施設への入職。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 対象は222人→ 大学病院で救急科研修を受けた初期研修医222人の調査。
- 美容医療を選んだのは4人→ 初期研修後に専門研修へ進まず、美容医療を最初の進路に。
- 少数ながら実態→ 「直美」を実際のデータで検討した数少ない報告の一つ。
研究では、2019年度から2023年度までの5年間に、大学病院で救急科の研修を受けた初期研修1年目の医師222人が調べられた。
医師は、医学部を卒業した後、医師免許を得てから、2年間の初期研修を経てはじめて、一人で自立した形で患者を診ることが可能となる。初期研修では、内科、救急、地域医療など複数の診療科を一定期間ずつ回る。今回の研究では、救急科の研修に取り組んだ研修医が研究対象となった。
今回の研究で注目したのは、初期研修の後に専門医を目指す研修へ進まず、美容医療を最初の進路として選んだ若手医師だ。これはいわゆる「直美」を選択した医師といえる。
美容医療を選んだのは222人中4人だった。なお、同じ期間に専門医を取るための専門研修以外の進路を選んだ研修医は美容医療の4人を含めて計10人だった。残りの6人は、旅行や個人的な活動を選んだ人、産業医を選んだ人、病院や診療所とは異なる形で精神科診療を選んだ人、海外での研修を選んだ人などだった。
美容医療を選んだ4人に見られた傾向

調査を実施。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 男性が中心→ 4人のうち3人が男性、1人が女性。
- 美容志望ではない→ 研修時点で美容医療を希望していた人はいなかった。
- 内科・外科志向は弱め→ 4人とも「その他」の診療科を志望するグループ。
美容医療を選んだ4人の性別は、男性は3人、女性は1人。出身大学は、3人が私立医学部、1人が公立大学。4人のうち親が医師である人はいなかった。
救急科の研修を受けていた時点での進路としては、4人のいずれも内科系や外科系を希望せず、「その他」の診療科を志望するグループに入っていた。このグループには、小児科、麻酔科、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科、形成外科、放射線科、病理、精神科などが含まれていた。
救急科の研修中から美容医療をはっきり志望していた人はいなかった。少なくとも、研修中の時点では、内科系や外科系の専門研修に強く向かっていたわけではなかった。
学生時代の課外活動では、4人全員が何らかの部活動に参加していた。内訳は、バドミントンやバスケットボールなどの球技系、文化系・ダンス、ゴルフ、山岳・海洋系がそれぞれ1人だった。ただし、この情報だけで進路選択との関係を読み取ることは難しい。
救急科での評価や留年歴との関連も検討

美容外科へ進む若い医師が増えている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
- 研修評価は低い傾向→ 他の進路を選んだ医師より低評価。
- 留年歴との関連も→ 4人中2人に医学部での留年経験が確認。
- 解釈には注意→ 著者らも結果の一般化には限界があるとしている。
研究では、救急科の研修が終わった時点で、初期研修1年目の医師を3つの項目で評価していた。項目は「臨床態度」「知識と技能」「救急診療への前向きな参加」で、いずれも5点満点だった。
評価は、研修医の評価に使われる「PG-EPOC」という仕組みを基に、救急科の指導医が、救急専攻医3人とも相談して行ったと説明されている。
その結果、美容医療を最初の進路に選んだ4人は、ほかの進路を選んだ218人に比べて、3項目すべてで点数が低かった。3項目の平均は、ほかの進路を選んだ医師が3.60だったのに対し、美容医療を選んだ医師では2.19だった。
ただし、この傾向は美容医療を選んだ4人だけに限られたものではない。論文では、一般的な専門研修以外の進路を選んだ10人全体でも、同じように評価が低い傾向があったとされている。
学業歴との関係も調べられた。美容医療を選んだ4人のうち2人には、医学部で少なくとも1年留年した経験があった。入試浪人の経験は、4人では確認されなかった。
研究グループは、こうした項目が美容医療を選ぶことと関係しているかも調べた。その結果、救急科での評価が低いことや、医学部で留年した経験があることは、美容医療を最初の進路に選んだことと関連していた。
さらに、複数の要素を同時に見た分析でも、評価の低さや留年歴が関連する項目として示された。なお、一般的な専門研修以外の進路を選んだ10人全体では、公立大学卒業者の割合が高い傾向も示されていた。ただし、ここで大切なのは、対象が少数にとどまる点だ。人数が少ないと、1人の違いだけでも結果が大きく変わる可能性がある。論文の著者らも、1施設の少数例による初期的な検討であり、結果を広く当てはめるには限界があるとしている。
論文では、美容医療を選んだ4人について、研修中の診療への関心や意欲が、ほかの研修医に比べて弱かった可能性があると考察している。ただし、この4人は、研修の時点から美容医療をはっきり志望していたわけではなかったとも説明している。
保険診療で手応えがない場合、別の道を考える流れもある

研修医の選択は?画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 直美全体を示す研究ではない→ 対象者が少なく、若手医師全体の特徴を断定できるものではない。
- 懸念を否定する結果ではなかった→ 直美への不安を打ち消すデータは得られなかった。
- 制度や環境も背景に→ 病院キャリアの見通しや働き方の問題が影響している可能性。
今回の研究から分かることは限られている。対象となった直美の医師は4人にすぎない。この結果だけで、初期研修後すぐに美容医療へ進む医師全体に共通する特徴だと見ることはできない。
だが、もし結果が逆で、直美を選んだ研修医の評価が高かったのであれば、「直美だからといって臨床評価が低いとは限らない」という材料になった可能性がある。今回の結果はそうではなかった。少なくとも、この小規模な調査では、直美への懸念を打ち消す結果は得られなかった。
その上で、今回の結果から何を読み取れるだろうか。
第1回で見たように、若手医師が美容医療へ向かう背景には、高い報酬や働きやすさに加えて、病院勤務の将来像の見えにくさ、専門研修制度への負担感、働き方改革による制限など、医療制度や病院の置かれた状況も影響している可能性がある。病院医療や保険診療のキャリアが、若手医師にとって魅力的に映りにくくなっている面も考えられる。
要は、誰であっても、若手医師が進路に悩みやすい環境になってきているということだろう。
そう考えると、「美容医療に進む若手医師がよいか悪いか」という単純な話ではない。保険診療の研修や病院でのキャリアに手応えを持ちにくい人ほど、別の進路を考えやすくなる可能性がある。より条件が分かりやすく、働き方の見通しも立てやすい美容医療が、進路の候補に浮かびやすくなることは不思議ではない。
進路に迷いがあれば、従来通りの決まったレールにそのまま進むことも起こりにくくなる。これはあくまで一般論だが、ある意味では自然なことにも見える。
第3回では、若手医師の進路を導く要因として存在感を増すSNSなどについて見ていく。
参考文献
Ota, K., & Ota, K. (2026). Characteristics of junior residents within an established emergency medicine rotation choosing aesthetic medicine as the initial specialty without completing a full specialty residency training program.
https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-8502125/v1
