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美容外科医は6年で2.5倍超 美容医療は専門分野としてどう見られているのか 若い医師を引きつける一方、学びの場が見えない 専門性も社会に伝わりづらいまま【連載・美容医療流入】

医師同士で確認する場面。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

医師同士で確認する場面。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 連載「美容医療流入」第4回では、美容医療そのものの専門性を考える。

 第1回から第3回では、初期研修後すぐに美容医療へ進む「直美」をめぐり、報酬、働き方、病院でのキャリアの見えにくさ、専門研修制度、SNS上で見える医師像などを見てきた。いずれも、若い医師を美容医療へ近づける周辺の条件である。

 ただ、それだけではまだ足りない。若い医師が美容医療そのものを、専門分野としてどう見ているのかという問題が残る。

 若い医師が美容医療に引かれる背景には、報酬や働き方だけでなく、専門的な技術を身につけたいという動機もある。

 問題は、その専門性を受け止める日本側の土台があやふやなことだ。今回は、その点を含めて見ていく。

美容外科医は6年で2.5倍超に増えた

診療科別の医師数の推移。2018年を100として指数化したもの。(出典/厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計」)

診療科別の医師数の推移。2018年を100として指数化したもの。(出典/厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計」)

  • 美容外科医が急増→ 美容外科を主たる診療科とする医師は、2018年から2024年にかけて2.5倍超に増えた。
  • 若年化も進む→ 医師全体や形成外科では平均年齢が上がる一方、美容外科では平均年齢が下がっていた。
  • 診療所中心の分野→ 美容外科医のほとんどは診療所で働いており、病院中心の形成外科とは構造が異なる。

 まず押さえておきたいのは、美容外科を主たる診療科とする医師が、この数年で急増していることだ。連載第1回では美容外科の診療所の増加を示したが、医師も同様だ。

 医療施設に従事する医師全体は、2018年の31万1963人から2024年の33万1092人へ、6.1%増だった。皮膚科は9362人から1万43人へ、7.3%増だった。

 形成外科も増えている。2018年の2573人から2024年の3354人へ、30.4%増えた。医師全体や皮膚科よりも明らかに高い伸びだ。形成外科への関心や需要が高まっている可能性はある。

 ただ、美容外科の伸びはさらに大きい。美容外科は2018年の678人から2024年の1720人へ増えた。増加率は153.7%。6年で2.5倍を超えたことになる。

 直近2年で見ても、その差ははっきりしている。2022年から2024年にかけて、医師全体は1.1%増、皮膚科は0.1%増、形成外科は4.6%増だった。これに対して、美容外科は1247人から1720人へ、37.9%増えていた。

 働く場所にも違いがある。2024年の形成外科は、3354人のうち病院2486人、診療所868人だった。まだ病院中心の分野といえる。一方、美容外科は1720人のうち診療所1701人、病院19人だった。美容外科は、ほぼ診療所で成り立っている分野だ。

 平均年齢にも特徴がある。医師全体の平均年齢は2018年の49.9歳から2024年の50.6歳へ上がり、皮膚科も50.7歳から51.4歳へ上がった。形成外科も43.5歳から44.3歳へ上がっている。ところが、美容外科は45.0歳から41.2歳へ下がっていた。

 形成外科も医師数は増えている。だが、美容外科はそれを大きく上回る勢いで増え、診療所中心で、平均年齢も下がっている。この数字だけで、若い医師の志望がそのまま分かるわけではないが、比較的若い医師が美容外科に入っている可能性は見えてくる。

 形成外科や皮膚科は、美容医療と接点の深い分野でもある。特に形成外科の医師数が全体を上回るペースで増えていることは、美容医療と接点を持つ領域への関心の広がりとも、一定程度重なっている可能性がある。

 では、その美容外科や美容医療は、若い医師にどのような専門分野として見えているのか。

若い医師は美容医療の何に引かれるのか

講義や研修の場面。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

講義や研修の場面。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 専門技術への関心→ 若い医師が美容医療に引かれる背景には、早く技術を身につけたいという動機もある。
  • 学ぶ場所が課題→ 美容医療を本気で学ぶ場合、どこで研鑽すべきかは今も分かりにくい。
  • 専門分野としての魅力→ 美容医療は、報酬や働き方だけでなく、専門領域として若い医師に映っている可能性がある。

 美容外科医が増えている背景には、これまで見てきたように、収入、働き方、病院での将来像の見えにくさ、専門研修制度、SNS上で見える医師像などが関わっていると考えられる。

 それに加えて、美容医療に進む動機には、専門的な技術を早く身につけたいという面もある。

 こうした考え方は、最近に限ったものではない。ヒフコNEWSが以前取材した重本譲氏は、1994年に医学部を卒業後、直接美容外科へ進んだ医師だ。当時は「直美」という言葉はなかったが、現在で言えばそれに近い経歴だったと語っている。重本氏は、美容医療に関心を持つ中で、どこで学べばよいのかを考え、直接美容外科に進む道を選んだという。

 現在の若手医師について考えても、美容医療に関心を持ったとき、どこで研鑽すればよいのかという問いは避けられない。直美と批判的に呼ばれる一方で、美容医療を本気で学ぶなら早く現場に入った方がよいという声もある。直美が正しいかどうかには議論があるが、そこには収入や働きやすさだけではなく、専門性をどう身につけるかという視点も従来から含まれている。

 美容医療をめぐる状況も変わっている。美容外科医は増え、症例写真だけでなく、合併症やトラブルの情報も目に入りやすくなった。自由診療トラブルや開業規制、医師偏在をめぐる議論も続いており、初期研修後すぐ美容クリニックに進む「直美」が得策とは限らないという見方も強まっている。そうした中で、美容医療を専門として学ぶ道筋への関心は、これまで以上に高まる可能性がある。形成外科や皮膚科を経て美容医療に関わる医師が増えれば、その重要性はさらに増すだろう。

 美容医療が専門分野として若い医師にどう映るのかは、海外の研究からも見えてくる。

 第3回でも触れたが、形成外科、再建外科、美容外科を含む領域についてまとめた2024年の海外レビューでは、医学生が形成外科領域に前向きな見方を持っていることが示されていた。

 ここで重要なのは、このレビューでは美容外科や審美外科が、形成外科領域の一部として扱われている点だ。

 日本では、美容が、保険診療や病院医療とは距離のある分野として見られがちだ。ただ、美容医療が広がり、技術や安全性への関心が高まれば、海外に近い形で、専門領域として位置づける見方も強まっていく可能性も考えられる。

 若い医師にとって、美容医療は専門分野として魅力を持ち得る。だが、その専門性をどこで、どのように身につけるべきなのかは、日本ではなお曖昧だ。ここに、直美をめぐる議論の次なるハードルがあるのではないか。

専門団体の役割が見えにくい

説明する医師。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

説明する医師。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 学会や資格が複数→ 美容医療に関わる学会や研究会、資格が増え、全体像が見えにくくなっている。
  • 標準が伝わりにくい→ どの学会が何を担い、どの資格がどの水準を示すのかが分かりにくい。
  • 専門団体の役割が重要→ 個人発信だけでなく、学会などが一定の見解を示すことが求められる。

 問題は、日本では美容医療を学ぶ道筋が分かりにくいことだ。

 日本の美容外科領域では、よく言われる通り、日本美容外科学会という名称でも、開業医中心のJSASと大学の形成外科中心のJSAPSという異なる流れがある。形成外科、皮膚科、美容外科、美容皮膚科、抗加齢医療など、関わる領域も広い。最近では、美容内科、美容医療、アートメイクなどの名前を掲げる学会や研究会も登場し、企業が運営する資格や講習もある。

 学びの場が増えること自体は悪いことではない。

 ただ、医学生や研修医、一般の人から見ると、どの学会が何を担い、どの資格がどの水準を示すのかは分かりにくい。

 美容医療を専門として学びたい若い医師が増えるなら、この点は重要になる。少なくとも、日本形成外科学会、日本皮膚科学会、2つの日本美容外科学会、日本美容皮膚科学会などが、美容医療の専門性について共通して示せるものを持たなければ、若い医師にも社会にも、その中身が伝わりにくい。

 その上、この分かりにくさはSNSで増幅される側面があると筆者は考える。

 美容医療をめぐる問題が起きたとき、医師個人の発信が前面に出やすくなっている。医師同士が互いを批判する場面もある。

 また、美容医療の範囲は、外科手技だけにとどまらなくなっている。美容皮膚科、美容内科、痩身治療、薬剤の自由診療での使用など、関わる領域は広がっている。

 直近でも、マンジャロなどの薬剤をダイエット目的で使うことをめぐり、SNS上で議論が広がった。こうした問題は、個々の医師が注意喚起をするだけで済むものではない。本来であれば、学会などの専門団体が一定の見解を示すことが望ましい。

 若い医師も、個々の医師の発信やクリニックごとの方針というのではなく、学会の方針を見ながら学ぶことができる。若い医師ばかりではなく、社会にとっても、何が標準なのかが透明になるだろう。

 美容医療がポジティブに評価されるには、専門団体の側が動くことこそ重要だろう。

専門性をどう示すかが問われている

会議や研修の場面。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

会議や研修の場面。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 美容医療にも専門性→ 美容医療には技術を磨く余地があり、専門分野としての側面がある。
  • 評価の仕組みが課題→ 誰が教え、誰が評価し、資格が何を保証するのかが見えにくい。
  • 次は倫理の問題へ→ 専門性を社会に示すには、自由診療としての倫理も避けて通れない。

 若い医師が美容医療に関心を持つこと自体は、不自然ではない。美容医療には、技術を磨く余地があり、来院者の満足にも直結する面がある。

 ただ、その専門性をどこで学び、誰が評価し、どの資格が何を保証するのかは見えにくい。直美をめぐる議論は、「若い医師が美容へ行くのが良いのか、悪いのか」だけ見ていても、あくまで課題の一部に過ぎないだろう。

 美容医療に専門性がないのではない。むしろ、専門性があるからこそ、それを誰が教え、誰が評価し、どのように若い医師、および社会へ示すのかが問われている。そして、その専門性が自由診療の市場で扱われる以上、次に避けて通れないのが倫理の問題と見て、第5回では、この点を論文を見つつ考える。

参考文献

 

医師・歯科医師・薬剤師統計(旧:医師・歯科医師・薬剤師調査):結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/33-20c.html

 

「元祖直美」美容医療30年の医師が直美問題を語る、今なら迷わず形成外科に行くと述べる理由、ジョウクリニック理事長重本譲氏
https://biyouhifuko.com/news/interview/9848/

Glynou SP, Petmeza CA, Georgiannakis A, Sousi S, Zargaran A, Zargaran D, Mosahebi A. Perceptions, awareness and influences of medical students towards plastic surgery: A systematic review. JPRAS Open. 2024 Apr 8;40:320-335. doi: 10.1016/j.jpra.2024.04.003. PMID: 38726047; PMCID: PMC11081776.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38726047/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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